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労働安全衛生
労働安全衛生法(昭和47年6月8日法律第57号)は、従来の労働基準法の労働安全衛生部分が独立する形で制定されました。
労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的に施行された法律です。
▼労働安全衛生法の目的
・危害防止基準の確立
・責任体制の明確化
・企業の自主的活動の促進
・総合的計画的な労働災害対策を推進
危害防止のためのリスクアセスメントを行い、責任体制を明確にし、計画的に労働安全衛生マネジメントを行っていくという労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)の手順との整合性が見られます。
▼労働安全衛生法の対象
直接の事業者だけでなく、機械設計、製造、流通販売業者等も、利害関係者として、労働災害防止の責務が規定されています。
建設業では、建設工事の注文者、設計者等も含まれます。
▼労働災害発生時の規定
労働安全衛生法では,労働災害により労働者が死亡、負傷または疾病により休業した場合に労働基準監督署への報告が義務づけられています。
労働災害によって労働者が死亡した場合は業務上過失致死罪に問われたり、報告書未提出や虚偽報告が明らかになった場合は書類送検となる例もあります。
▼労働安全衛生マネジメントシステム
労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)は、事業者が労働者の協力の下に、「計画−実施−評価−改善」という一連の過程を定めて、連続的かつ継続的な安全衛生管理を自主的に行うことにより、事業場の労働災害の潜在的危険性を低減するとともに、労働者の健康の増進及び快適な職場環境の形成の促進を図り、事業場における安全衛生水準の向上に資することを目的とする新しい安全衛生管理の仕組みです。
労働省では、今後、システム普及促進事業等を通じて本指針の周知を図り、事業場における安全衛生水準の向上を図るとともに、国際労働機関(ILO)において検討されている国際的指針の策定について積極的に協力して行くこととしています。
平成11年4月30日に、労働省から「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号)が公表されました。
平成18年4月1日施行の改正労働安全衛生法では、この労働安全衛生マネジメントを行っている企業へ向けた優遇処置が規定され、計画の届出を行う義務のある事業者について、労働安全衛生マネジメントシステムを実施しているとの認定を受けると計画の届出が免除されます。
代表的な労働安全衛生マネジメントシステムとして、OHSAS18001認証取得が挙げられます(1999年に、各認証機関により乱立していた認証基準を世界的に一本化)。
●長時間労働者への医師による面接指導
(労働安全衛生法第66条の8、第66条の9、第104条関係)
過重労働による健康障害を防止するため、長時間労働者に対する面接指導を実施する義務が平成20年4月1日からこれまで猶予されていた常時50人未満の労働者を使用する事業場についても適用されます。
▼対象
全ての事業場です。
▼事業者
・事業者は、長時間の労働により疲労の蓄積が認められるときは、医師による面接指導を行わなければなりません。
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事業場で定める基準の規定例;
・週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超えた労働者及び2〜6か月間の平均でl月当たり80時間を超えた労働者全てに面接指導を実施する。
・週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた全ての労働者に面接指導を実施する。
・週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者で産業医が必要と認めたに面接指導を実施する。
・週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者に係る作業環境、労働時間等の情報を産業医に提出し、事業者が産業医から助言指導を受ける。
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・事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え疲労の蓄積が認められる労働者に対して面接指導を実施する法的義務があります。
労働者の週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超え疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者、その他事業場で定める基準に該当する労働者にも面接指導又は面接指導に準ずる措置を講じる努力義務があります。
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▼面接指導
・上記の時間に該当するか否かの算定は、毎月1回以上、基準日を定めて行ってください。
・医師は、労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況(メンタルヘルス面も含む。)について確認し、労働者本人に必要な指導を行います。
・事業者は、面接指導を実施した労働者の健康を保持するために必要な措置について医師の意見を聴いて下さい。
・事業者は、医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じるほか、医師の意見を衛生委員会等へ報告する必要があります。
・面接指導の業務に従事した者には、その実施に関し守秘義務が課せられます。
●健康診断の受診
健康診断とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものです。
学校や職場、地方公共団体で行われる法令により実施が義務付けられているものと、受診者の意思で任意に行われる場合があります。
任意に行われる健康診断は診断書の発行を目的とした一般的評価のことが多いです。
全身的に詳細な検査を行い多種の疾患の早期発見を目的としたサービスも広く普及しています。
危険物・特定の化学物質などを扱う職業の従事者はそれに応じた健康診断を定期的に受けることが義務づけられており、この健康診断は重大な職業病の発生を未然に防ぐことが目的という点で一般的なものとはやや性格を異にします。
職場で実施が義務付けられているのは、労働安全衛生法66条によるものです。
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労働安全衛生法66条;
「 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
2 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
3 事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、歯科医師による健康診断を行なわなければならない。
4 都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、労働衛生指導医の意見に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、事業者に対し、臨時の健康診断の実施その他必要な事項を指示することができる。
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。」
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第5項に掲げる義務は、国家に対する義務です。
義務違反には、使用者に対する罰則も用意されています。
この国家に対する義務は、使用者と労働者の間の私法上の権利義務を当然に生じさせるものではありません。
したがって、同法を根拠にして、労働者が使用者に対して受診を義務付けられ、あるいは使用者が労働者に対し健康診断の実施を義務付けられるものではありません。
法律に基づいて私法上の権利義務が生じない場合には、労働契約に基づく必要があります。
近年は就業規則も整備され、こうした権利義務を明文化している例も増えてきました。
しかし、それでも、個々の事案においては、規定が不十分な場合もあります。
この場合の規定の不備を補うのは、信義則の有無です。
信義則とは、民法第1条第2項の規定に基づくものです。
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民法1条;
「 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。」
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契約に規定されていない新たな規範も信義則を通じて生み出されていますので、業務命令の範囲の解釈にこの信義則を用いることもできます。
労務提供という労働契約上の直接の権利義務だけでなく、これに付随するものも信義則から業務命令の範囲となる場合があります。
定期健康診断の受診命令権および受診義務は、仮に就業規則上の根拠がなくても、この信義則に基づく業務命令として認められる可能性があります。
実際の裁判では一般的な義務があるとは判断されず個別判断となり、いかなる特別な事情があるか、いかなるプロセスを踏んだかなどが問われます。
具体的には、企業が労働者に受診命令を党する必要性があるか、労働者自身が心身の状態を立証すべき状況にあるかなどが考慮要素となります。
定期健康診断を受診しない労働者は散見され、受診しても再検査や要検査と判断された場合には、病院に行きたがらない労働者はさらに増えます。
この場合、懲戒処分等を検討する企業もありますが、本質的な解決とはいえません。
懲戒することで責任回避するよりも、実際に定期健康診断を受けさせることのほうが求められます。
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