雇用・人事・労務・年金・健保・助成金のご案内 本文へジャンプ

雇用・人事・労務・その他・業務

懲戒処分

 懲戒処分は、懲罰的な意味がある職務上の処分のことをいいます。

▼公務員における懲戒処分

 懲戒処分とは、職員に非違行為があったときになされる処分をいい、国家公務員法および地方公務員法にその定めがあります。

----------

 国家公務員法第82条;

「 職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
 ・・・・・」

 地方公務員法第29条;

「 職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
 ・・・・・」

----------

 職員は、法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることはありません。

 懲戒処分の種類には、免職、降級(降任)、停職、減給、戒告(譴責)があります。

 戒告以上の処分を受けた場合は勤務成績が良好でない者とされ、昇給延伸、勤勉手当のカットを同時に伴います。

 任命権者は非違の程度や情状によって懲戒処分の内容を決定します。

 如何なる処分を選択するかについては、任命権者の裁量に委ねられています。

 なお、一個の義務違反に対し二種類以上の懲戒処分を併課することはできません。

 また、懲戒処分は任命権者の懲戒権にもとづく行政内部の処分であり、国家の一般的統治権に基づき公共の秩序維持のために科する刑罰とは目的を異にしているため、懲戒処分と刑罰を併課することは差し支えないとされます。

 また、公務の効率性を保つことを目的として行なわれる処分として分限処分があり、同一の事由について懲戒処分を併せて行うことは、いずれかの処分により職員の身分が失われない限り可能で、その選択は任命権者の裁量により、個々の事案に即して適切に判断されるべきものとされます。

▼民間企業における懲戒処分

 民間企業では、多くの場合、就業規則に懲戒処分に関する規定がおかれています。

 懲戒処分は規定があればそれによって行われますが、具体的な内容は企業等によって異なります。

----------

 サンプル;

 社員が次の1つに該当するときは、懲戒の種類に従い懲戒する。

(1) 就業規則、その他会社の諸規程ならびに命令および指示に違反したとき

(2) 再三の注意にかかわらず、遅刻、早退、欠勤等多く、勤務態度不良にして、業務

に対し誠意なしと認められたとき

(3) 業務上重大な過失を犯したとき

(4) 会社の秩序をびん乱し、または会社の名誉を毀損したとき

(5) 故意または重大な過失によって、会社に不利益をもたらしたとき

(6) 刑罰法規にふれて、会社に迷惑を及ぼしたとき

(7) 会社の承認なく第三者に雇用され、または事業を営み、会社等を設立して役員等に就任したとき

(8) 会社の金品を窃取または横領したとき

(9) 職務上知り得た機密等を第三者に流用したとき

(10) その他、上記の各号に準ずる事由のあるとき


 懲戒は次の7種類とし、軽重に応じこれを課する。

(1) 訓告(口頭にて将来を戒める。)

(2) 譴責(始末書をとり、将来を戒める。)

(3) 減給(始末書をとり、法に定める範囲内で給与を減じ、将来を戒める。)

(4) 昇給停止(1年間昇給を停止する。)

(5) 出勤停止(始末書をとり、2カ月以内の出勤を停止する。この期間中給与を支給しない。)

(6) 諭旨解雇(退職願いの提出を勧告し、これに応じない場合は直ちに懲戒解雇処分を行う。)

(7) 懲戒解雇(即時解雇する。)

●始末書の提出

 始末書については、謝罪や誓約を伴う始末書と、謝罪や誓約を伴わない始末書があります。

▼謝罪や誓約を伴う始末書

 一般に、違反行為をした者がその行為について謝罪するとともに、将来、同様の行為を繰り返さないことの誓約の意思表示を行うものとされています。

 始末書は、譴責、減給、出勤停止などが行われるときに提出させる場合が多いようです。

 使用者が労働者に始末書の提出を求めること自体は、正当な理由のない場合など裁量権の濫用に当たるものでない限り、違法性を有するものではありません。

 しかし、軽微な過誤について執拗に反省文の提出を求めたり、叱責の仕方が過度、執拗であった場合は、指導監督権の行使として裁量権の範囲を逸脱し、違法行為となることがあります。

 懲戒処分としての始末書の提出を、会社側の決めた通り本人が任意で行えば問題ありませんが、本人に提出の意思がない場合にこれを強制できるか、また強制をしないまでも提出を拒んだ場合に懲戒処分が可能かという問題があります。

 多くの裁判例は否定的です。

----------

 近鉄タクシー事件(大阪地判昭和38.2.22)

「本件における始末書は謝罪の意思表示を含む文書とみるべきである。だとすればそもそもそのような謝罪を会社は従業員に求めうるか否かが問題となる。勿論従業員が任意にこれを提出することは妨げないとしても、不提出の場合に何らかの制裁を加えて間接的に強制してまでこれの提出を求めうるかは疑わしい。何故ならばいうまでもなく雇傭契約は労働力の売買であつて、その労働者の意思、感情までもその取引の対象としている訳ではなく労働者にはその雇傭されている企業に対する債務の本旨に従う労務提供義務こそあれ、雇傭契約に基く拘束を超えて全人格的服従義務、いわば封
建制下の忠誠義務のようなものはないのである。だとすると始末書の不提出自体を不都合な行為として懲戒解職(或は他の懲戒処分)の事由とすることは、これを間接強制する結果になるから許されないものというべきである。」

 福知山信用金庫事件(大阪高判昭和53.10.27)

「本件誓約書を提出しなかったことが、これ迄のXらの行為と相まち、本件解雇を正当ならしめるものであったかどうかについて考えるに、Y金庫の要求した誓約書には包括的な異議申立権の放棄を意味するものともうけとれる文言が含まれていて、内容の妥当を欠くものがあったばかりでなく、そもそも本件のような内容の誓約書の提出の強制は個人の良心の自由にかかわる問題を含んでおり、労働者と使用者が対等な立場において労務の提供と賃金の支払を約する近代的労働契約のもとでは、誓約書を提出しないこと自体を企業秩序に対する紊乱行為とみたり特に悪い情状とみることは相
当でないと解する。そうだとすると、本件においては、Xらの本件誓約書の不提出並びにこれに関連する諸情状を考慮に入れても、解雇の正当性を基礎づけることはできず、結局本件解雇は懲戒権の濫用としてその効力を生じないものと判断せざるを得ない。」

----------

 始末書の提出拒否を理由とする懲戒処分について

 個人の意思の自由は最大限に尊重されるべきであることを理由に否定する考え方と、業務に関連する始末書の提出は労働者の義務と解すべきであることを理由に肯定する考え方があります。

----------

 豊橋木工事件(名古屋地判昭48.3.14)

「近代的雇用契約のもとでは労働者の義務は労務提供業務に尽き、労働者は何ら使用者から身分的人格的支配を受けるものでなく、個人の意思の自由は最大限に尊重されるべきであることを勘案すると、始末書の提出命令を拒否したことを理由に、これを業務上の指示命令違反として更にあらたな懲戒処分をなすことは許されない。」

 水戸駅観光デパート事件(水戸地判昭和37.9.6)

 業務に関連する始末書の提出は、労働者の義務と解すべきであるので、就業規則の規定に基づき懲戒処分できるとした。
 この事件でも、懲戒処分は可能としながら、始末書提出拒否を理由に懲戒解雇をすることは客観的に妥当性を欠くとして、懲戒解雇処分を無効とした。

----------

▼謝罪や誓約を伴わない始末書

 これに対して、謝罪や誓約を伴う始末書ではなく、違反行為の顛末や単なる事実経過を報告させる、いわゆる「顛末書」や「経過報告書」などについては、それが業務に関する事実関係を報告させる範囲のものである限り、会社は業務命令の一環としてこれらの報告書の提出を命ずることができます。

 ただし、この場合、報告書に労働者の自己反省や謝罪などを盛り込むことを強制することは、個人の良心の自由に関わる問題となり許されません。