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雇用・人事・労務・その他・業務

労働組合と使用者





●併存組合におけるチェックオフの要求


 労働組合が2つある場合、一方の組合と労使協定を締結してチェックオフをおこなっているとき、他方の組合についてもチェックオフをすることができるでしょうか。

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 チェックオフとは、労働組合と使用者との間に締結された協定に基づき、使用者が組合員の賃金から組合費を控除し、それらを一括して組合に引き渡す制度です。

 労基法24条1項は、賃金全額払いの原則を定めています。

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 労働基準法第24条1項;

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」

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 チェックオフは賃金の一部控除にあたりますが、これについては、同条の但書きで、「労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定」により、賃金の一部を控除をして支払うことができるとしています。

 従業員の過半数で組織する多数組合とチェックオフ協定を締結していれば、少数組合とのチェックオフについても、その協定の範囲内で行うことができます。

 なお、いったん定着したチェックオフを労働組合の了解を得ずに使用者の都合で廃止することは、組合の財政基盤を揺るがすものとして不当労働行為を問われることがあります。

 また、2つの組合についてチェックオフを行うことが定着したあと、一方の労働組合のみチェックオフを廃止するといった取り扱いをおこなった場合も、組合間差別により組合の弱体化を企図したものとして不当労働行為と判断されることがあります。

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 済生会中央病院事件(最高裁第2小平成1.12.11)

 チェックオフ(組合費を賃金から差し引くこと)を行うには、労働基準法第24条第1項但し書の労使協定が必要であるとし、同労使協定のない下でのチェックオフの中止は不当労働行為に当たらないとした。





●ユニオン・ショップ制のパートへの適用


 会社と正社員限定のユニオン・ショップ協定を締結している労働組合で、これまで正社員に限定してきた組合員資格を、組合規約を改定してパートタイマーにも組合員資格を与えた場合、ユニオン・ショップ協定の効力はパートタイマーにも及ぶでしょうか。

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 ユニオン・ショップ(union shop)は、職場において労働者が必ず労働組合に加入しなければならない、という制度です。

 日本における法的根拠は労働組合法第7条第1項第1号但書きによります。

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 労働組合法第7条
「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一  労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。」

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 ユニオン・ショップ協定を結ぶことができる組合は、その事業場の労働者の過半数で結成されている組合であることが必要です。

 その組合が、労働組合法第2条、第5条に規定するような自主的・民主的な組合であれば、労働者個人が持つ団結に加わらない自由と衝突するとしても、高次の団結権を擁護する必要から、ユニオン・ショップ協定の効果として、使用者がその組合からの脱退・除名者を解雇することは有効とされています。

 雇い入れ時には組合員資格を問わないという点で、組合員のみの採用を義務付けるクローズド・ショップと異なります。

 ユニオン・ショップ協定があると、採用時までに労働組合加入が義務付けられ、採用後に加入しない、あるいは組合から脱退し、もしくは除名されたら、使用者は当該労働者を解雇する義務を負います。

 ただし、中には「従業者は組合員であること」のみを定めて解雇規定のない「宣言ユニオン」、脱退者の解雇を使用者の意思に任せる「尻抜けユニオン」になっているものもあります。

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労働組合は、主体的・自主的な団体として、その構成員の範囲について自ら自由に決めることができます。

 パートタイマーを組合員にするかどうかは、労働組合が自らの判断で決めれば良いことで、使用者の了解や同意を得る必要はありません。

 一方、ユニオン・ショップ協定は労働組合と使用者との間の労働協約であり、その中で適用範囲を限定している場合には、限定どおりの適用範囲となります。

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 労働組合法第14条;

「労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。」

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 締結された労働協約上で、組合員の範囲を正社員に限定している場合は、当該労働協約をそれら以外の者には適用しない旨労使が合意し確認したものと解されます。

 後に範囲外の者が組合に加入したとしてもそれにより協定の適用を受けることにはならず、新たにパートタイマーにも適用させるには、改めて労使間で合意確認することが必要となります。
 
 ユニオン・ショップ協定の効力をパートタイマーに及ぼすには、パートタイマーに組合員資格を与えるだけでは足りず、組合規約の改定と併せてユニオン・ショップ協定の適用範囲についても改定することが必要です。

 パートタイマーにもユニオン・ショップ協定を適用するかどうかは、パートタイマー自身の雇用上の身分にかかわる非常に大きな問題です。

 パートタイマーの理解を得るべく労働組合の意義や役割を十分説明するとともに、労使及びパートタイマーとの三者間で事前に良く話し合って決めることが望ましいと思われます。





●労働組合の結成と資格審査

 労働組合を結成した場合、必ず資格審査を受けなければならないでしょうか。

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 労働組合は、労働者の自由な意思だけで結成することができますので、その結成にあたって、どこかへ届け出たり、誰かの許可を受けたりする必要はありません。

したがって、労働組合の結成にあたり、労働組合の資格審査を受ける必要はありません。

 ただし、労働組合が一定の活動を行う場合には、管轄する労働委員会に申請して、労働組合法第2条及び第5条第2項の要件を満たした労働組合である旨の認定を受ける必要があります。

■資格審査が必要な場合

 資格審査が必要であると法律が定めている労働組合活動は次のとおりです。

 これらのことを行おうとする度ごとに、資格審査を受ける必要があります。

・労働委員会の労働者委員候補者の推薦(労働組合法第5条第1項)

・不当労働行為救済申立て(労働組合法第5条第1項)

・法人登記(労働組合法第5条第1項及び第11条第1項)

・労働協約の地域的拡張適用の申立て(労働組合法第5条第1項)

・労働者を代表する地方調整委員候補者の推薦(労働組合法第5条第1項)

・無料の職業紹介事業(職業安定法第33条第2項)

・無料の労働者供給事業(職業安定法第45条)

これら以外のこと、例えば、労働争議のあっせん、調停、仲裁の申請や裁判所への提訴などを行う場合は、資格審査を受ける必要はありません。

■資格審査の基準

資格審査では、労働組合が労働組合法第2条及び第5条第2項に定められている以下の要件を備えているかどうかを審査します。

・自主的な労働組合であるか、という自主性の要件(労働組合法第2条)

 労働者が主体となって組織した団体であること

 労働条件の維持改善

 その他経済的地位の向上を目的としていること

 使用者の利益を代表するものが参加していないこと

 使用者から経理上の援助を受けていないこと

 共済事業、その他福利厚生事業のみを目的としていないこと

 政治活動又は社会運動を主目的としていないこと

・労働組合の規約に以下の事項を定めているか、という民主性の要件(労働組合法第5条第2項)

 労働組合の名称

 労働組合の主たる事務所の所在地

 連合団体でない労働組合(単位労働組合)の場合には、組合員がその労働組合の問題に参与する権利及び均等の取扱いを受ける権利を有すること

 いかなる場合でも、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員としての資格を奪われないこと

 単位労働組合の役員は、組合員の直接無記名投票によって選挙されること、連合団体である労働組合又は全国的組織を持つ労働組合の役員は、傘下の単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により行われること

 総会は少なくとも年1回開催すること

 あらゆる財源と支出内容、主な寄附者の氏名及び現在の経理状況を示した会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人によって正確であるとの証明とともに、少なくとも毎年1回は組合員に公表されること

 同盟罷業を行うには、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の賛成が必要であること

 単位労働組合の場合、規約を改正するには、組合員の直接無記名投票により過半数の賛成を得る必要があること、連合団体である労働組合又は全国的な規模を持つ労働組合の場合、規約を改正するには、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の賛成を得る必要があること

■資格審査の手続き

 労働組合の資格審査は、申請、調査、審査、決定、決定書の写しの交付、という一連の流れで行われます。

 労働組合が資格審査の申請をする場合には、管轄する労働委員会に、資格審査申請書を提出するとともに、労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合することを立証する資料を提出する必要があります。

 資格審査申請書が提出されると、提出書類のチェックを行い、また必要があれば申請組合の事務所に出向いて実態調査を行います。

その後、公益委員会議において、提出された立証資料及び実態調査の結果を基に、当該組合が前述した労働組合の資格要件(労組法第2条の自主性の要件及び同第5条第2項に規定する民主制の要件)の規定に適合しているかどうかを審査します。

 公益委員会議の審査の結果、資格要件の規定に適合すると決定された場合には、資格審査決定書が作成され、決定書の写しが労働組合に交付されます。

 審査の結果、不適合な点がある場合は、一定の期間を定めて補正勧告をし、それを受けて組合が補正し適合すると認められれば、資格決定書の写し又は資格証明書が交付されます。

 申請組合が労働委員会の決定に不服の場合には、その決定書の写し又は資格証明書の交付を受けた日から15日以内に、中央労働委員会に再審査を申し立てることができます。





●在籍専従制度

 在籍専従者を置きたいとの要求を認めるか否かの判断に基準はありますか。また、在籍専従者を認めるにあたって、取り決めるべきことは何ですか。

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 在籍専従とは、労働組合の役員が従業員としての地位を保ったまま、専ら労働組合の業務に従事することをいいます。

 それに対し「離籍専従」は、従業員が退職(離籍)して労働組合の業務に従事することをいいます。

一般的には、労働協約において在籍専従を設置することを定めているようです。

 労働協約に定めがない場合は、使用者の個別の承認が必要となります。

通説・判例では、在籍専従を要求する権利が憲法第28条の団結権に当然に含まれているというわけではなく、在籍専従は使用者の承諾があって初めて成立するものであり、この承諾を与えるか否かは使用者の自由であるとされています。

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 三菱重工業長崎造船所事件(最高裁第1小昭和48.11.8)

 労働組合の在籍専従について、在籍専従を要求する権利が憲法28条の団結権に当然含まれるものではなく、使用者の承諾があって初めて成立するものであり、承諾を与えるか否かは使用者の自由である。

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 また、一部の公務員の場合、職員としての在職期間を通じて、7年以下の範囲内で人事委員会規則又は公平委員会規則で定める期間を超えてはならないとされ、在籍専従の期間は休職者とし、いかなる給与も支給されず、退職手当の算定の基礎となる勤続期間に算入されないと定められています。

 労働組合の規模が大きくなると在籍専従制度は労働組合の存続に必要不可欠なものでますし、また、正当な理由もないのに認めないことは、支配介入の不当労働行為となるおそれがあり、組合側と必要性についてよく話し合うことが重要であると考えられます。

在籍専従者を認めるにあたっては、在籍専従者の人数・専従期間・専従期間中の待遇・専従期間後の措置などについて、労働協約でできるだけ具体的に定めておくのが望ましいと考えられます。

 在籍専従者を認めないことが不当労働行為とされるおそれのある場合;

・労働協約の中に在籍専従を認める規定があるのに認めない。

・正当な理由もなく、特定の組合員が専従者になることを拒む。

・企業内に複数の組合がある場合に一方の組合は専従を認めて、他方の組合は認めない。

在籍専従者は、通常休職扱いとなり、これによって労働義務は免除されます。

 したがって、使用者は在籍専従者に対して賃金を支払う義務はありません。





●ユニオン・ショップ協定による解雇

 会社とユニオン・ショップ協定を結んでいると労働組合を脱退すると、少数組合に入っても解雇されるのでしょうか。

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■ユニオン・ショップ協定

 ユニオン・ショップ協定は、会社に雇用された労働者は必ず労働組合に加入しなければならず、労働者が労働組合に加入しない場合や、組合から脱退したり除名されたりした場合には、その労働者は解雇されるという制度です。

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 労働組合法第7条第1号;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一  労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。」

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 労働者には団結権が保障されている一方、団結しない自由もあるのですが、憲法で保障された団結権を擁護するという見地から、ユニオン・ショップ協定は有効とされています。

 ユニオン・ショップ協定がある場合には、労働組合からの脱退者や除名者を会社が解雇することは、一般的に有効と考えられています。

 なお、特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する、という要件を具備していない労働組合が締結したユニオン・ショップ協定は無効とされています。

 また、協定締結後に、その労働組合の組合員数が全労働者の過半数に満たなくなった場合には、効力を失うとされています。

 ユニオン・ショップ協定を結んでいるところでも、実際には、例えば、「組合員資格を失った者の解雇については、労使が協議して決める」とか、「会社が解雇を不適当と認めたときには、解雇しないことがある」というように、解雇に例外を設ける場合も多く見受けられるようです(尻抜けユニオン)。

■複数組合が存在する場合

 企業内に複数の労働組合が存在する場合、多数組合が締結したユニオン・ショップ協定の効力は、少数組合に所属する組合員には及ぶかどうかについては見解が分かれています。

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 三井倉庫港運ショップ制解雇事件(最高裁第1小判平1.12.14)

「労働者には、自らの団結権を行使するため労働組合を選択する自由があるから、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである。」

 日本鋼管鶴見製作所事件(最高裁第1小判平成1.12.21)

 同旨

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 ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の団結権も、新たに結成された労働組合の団結権も憲法上等しく尊重されるべきものです。

 ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合に加入せず、他の労働組合も選択していない労働者については、当然にユニオン・ショップ協定の効力が及びます。

 しかし、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合からの脱退者や被除名者が、他の労働組合を結成したり、既存の他の労働組合に加入したりした場合には、労働者の組合選択の自由や他の労働組合の団結権を侵害することは許されないことから、これらの者にはユニオン・ショップ協定の効力は及ばないとされています。

 多数組合のやり方に不満がある場合、まず組織内でその変更のために努力を尽くし、それが不可能ないし困難と判断されるのなら、少数組合があればそれに加入し、少数組合がない場合や、あっても意に沿う組合がない場合には、新たに組合を立ち上げることも有効と考えられます。

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労働組合が組合員に対しておこなった除名処分が、合理的な理由がなかったり、手続違反があったりして無効と判断される場合

 日本食塩製造事件(最高裁第2小昭和50.4.25)

「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」「適法なユニオンショップ協定に基づく解雇を有効と認めるが、使用者が解雇義務を負うのは、労働者が正当な理由なく組合に加入しないとき、及び有効に組合から脱退もしくは除名されたときに限定される。」「また、除名が無効な場合は、使用者に解雇義務が生ぜず、解雇は解雇権の濫用として無効になる。」
 
 東芝労組脱退事件(最高裁第2小平成19.2.2)

「社外のA労働組合にも加入している従業員が、企業とユニオンショップ協定を結ぶB労働組合を辞めないことで会社と合意した後、B労働組合からの脱退、チェックオフの中止、天引きされた組合費の返還を求めたことに対し、脱退の自由という重要な権利を奪い、永続的服従を強いるのは公序良俗に反するとして、合意を無効とし、従業員の訴えを認容した。」





●組合員個人からのチェック・オフ中止申し出

 現在加入しているチェック・オフ協定のある労働組合を脱退して別の労働組合へ加入する場合、加入中の組合への組合費の控除の中止の会社への申し入れは、組合員個人からチェック・オフの中止として行うことができますか。

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 チェック・オフは、使用者が給与支給の際、労働者の賃金から組合費を天引きし、労働組合に一括して渡すことをいいます。

 労働基準法第24条に基づく労使協定により、賃金から控除するため、「24協定」による「24控除」ともいわれます。

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 労働基準法第24条第1項;

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」

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 組合にとっては徴収の、組合員にとっては組合費納入の手間が省けるため、広く普及しています。

 ただし、チェック・オフを実施することができるのは、労使間で、賃金控除に関するチェック・オフ協定によって合意がなされた場合に限られます。
 
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 済生会中央病院事件(最高裁第2小判平成1.12.11)

「チェックオフを行うには、労働基準法第24条第1項但し書の労使協定が必要であり、同労使協定のない下でのチェックオフの中止は不当労働行為に当たらない。」

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 また、過半数労働組合または労働者の過半数代表による締結という要件は満たさなければなりませんが、過半数に満たない組合による締結が可能であるか否かについては学説に争いがあります。

 なお、会社に2つ以上の組合がある場合、それぞれの組合と24協定を締結すれば、所属組合を問わずチェック・オフをすることができます。

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 ネスレ日本(霞ヶ浦工場)事件(最高裁第1小判平成7.2.23)

「チェックオフ協定を有する単一の組合が内部抗争により、会社内に2つの組合が事実上存在するに至った場合において、会社が、チェックオフの中止を申し入れた一方の組合・同支部の存在を認識し、その所属組合員を把握した年月以降も、右の中止申し入れを無視してその組合員らについてチェックオフを続け、その控除額を他方の組合支部に交付したことは、一方の組合・同支部の運営に対する支配介入であり、労組法7条3号の不当労働行為に当たるとした原審の認定判断は正当として是認できる。」

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 また、チェック・オフの実施については、チェック・オフ協定のほかに、個々の組合員からの委任も必要な要件とされていますので、個々の組合員からチェック・オフ中止の申し出があった場合には、会社はチェック・オフを中止しなければなりません。

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 エッソ石油事件(最高裁第1小判平成5.3.25)

「使用者と労働組合の間に労働基準法24条1項ただし書の要件を具備するチェックオフ協定が労働協約の形式により締結されている場合であっても、使用者が有効なチェックオフを行うためには、当該協定の外に使用者が個々の労働組合員から委任を受けることが必要であって、委任が存しないときは、使用者は当該組合員の賃金からチェックオフをすることはできない。」
「組合員からチェックオフの中止が使用者に申し入れられたときは、使用者は当該組合員に対するチェックオフを中止すべきものである。」

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 ただし、当該組合員が引き続き組合に所属している場合は、個々の組合員からチェック・オフ中止の申し出はできないとの見解もあります。





●会社会議室における組合集会

 労働組合には、終業時間後に組合集会を会社の許可なく会社の会議室で開催する権利がありますか。

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 労働組合は、労働者の経済的地位の向上などを目的として争議行為や組合活動など様々な活動を行います。

 争議行為は、労働条件の維持・改善のため、組合員の要望をまとめて組合の代表者を通じて使用者と団体交渉、ストライキなどで交渉することをいいます。

 争議行為以外の、集会、大会、ビラ貼りなどの諸活動は、一般に組合活動と呼ばれています。

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 正当な組合活動については、争議行為と同じように、憲法および労働組合法により、刑事免責、民事免責、不利益取り扱いからの保護といった特別な法的保護が与えられているとされています。
 
 組合活動の正当性は、その主体や目的、態様などが妥当であるかどうかによって判断されることとなります。

 争議行為とは異なり、原則として業務妨害や労働義務違反、使用者の施設管理権の侵害は許されないと考えられています。
 
 正当性のない組合活動の場合には、刑事・民事責任を負い、懲戒処分に付される可能性もあります。

 使用者は、通常、自己の所有または占有する建物、敷地、設備などの企業施設を、企業目的に合うように管理・保全する施設管理権を有しています。
 
企業内における組合活動は、使用者の施設管理権による一定の制約を免れないものとされ、休憩時間あるいは就業時間外であっても、原則として、使用者の承諾なしに自由に企業施設を使用することはできないと解されています。

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 国労札幌支部事件(最高裁第3小判昭和54.10.30)

「企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行なうものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、または具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。」

 池上通信機事件(最高裁第3小判昭和63.7.19)

「組合の会社施設の利用を認めず、許諾を得られないままに開催した組合集会についてその開催を妨害したことに対する労働委員会の救済命令を取り消す原審判決を維持した。」

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 ただし、使用者に施設管理権があるといっても、組合の弱体化を意図して使用させないというような場合には、支配介入の不当労働行為と判断される可能性があります。

 組合活動は、組合が主体となって自主的に決定し行動するものですので、いつ、どこで行おうとも組合の自由です。

 他方、使用者には組合活動のために自由に企業施設を使用させなければならない義務があるわけではありません。  

 組合としては、使用者との合意によって、組合活動のために企業施設を使用する際の要件や手続きなどのルールづくりをしておくことが望ましいと言えます。





●組合加入を理由とする解雇

 組合活動に関心がないと答えていた者を採用しましたが、入社後、間もなく、労働組合に加入した場合、会社としてこの者を解雇しても問題がないか。

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 使用者が行う労働組合運動に対する妨害的行為を不当労働行為と言い、労働組合法第7条において禁止されています。

・特定の労働者が労働組合に加入していること、組合を結成しようとしたことその他労働組合の正当な行為をしたこと、又は不当労働行為の申立てをしたこと若しくは労働争議の調整をする場合に証拠を提出し若しくは発言をしたこと等を理由として、その労働者を解雇しその他これに対し不利益な取扱いをすること。

・労働者が労働組合に加入せず、又は労働組合から脱退することを雇用条件とすること。(いわゆる黄犬契約(yellowdog contract))

・正当な理由なく、団体交渉を拒否すること。

・労働組合の結成、運営を支配介入し、又は労働組合に対して経理上の援助をすること。

・その他。

 このような場合、解雇のみならず、人事上の不利益取り扱い、経済上の不利益取り扱い、精神上の不利益取り扱い、組合活動上の不利益取り扱いなどの、その他の不利益取り扱いも禁止しています。

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 労働組合法第7条第1号;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一  労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。」

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 労働者が労働組合に加入したことを理由とする解雇は、労働組合法第7条第1号により不当労働行為として禁止されていますので、労働組合に加入したことを理由に労働者を解雇することはできません。

 使用者が労働組合に加入したことを理由としてその労働者を解雇した場合、解雇された労働者やその者が加入する労働組合及びその上部団体は、労働委員会に対して不当労働行為救済申立てを行うことができます。  

 その解雇を労働委員会が不当労働行為であると判定した場合には、労働委員会は、解雇前の職場への復帰や、解雇がなければ労働者が得られたであろう賃金相当額の支払いなどを使用者に命じることになります。

 また、労働者が労働組合に加入しないことや加入している労働組合を脱退することを雇用条件にすることは不当労働行為として禁止されており、労働契約の当該部分が無効となると解されています。





●就業時間中の組合活動

 就業時間中の組合活動が不当でなく職務専念義務にも違反しないとされるのはどういう場合か。

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 労働者は労働契約に基づき、就業時間中は使用者の業務命令に従って職務を誠実に遂行する義務を負っています。

 原則として就業時間中の組合活動は正当性を認められません。

 就業時間中の組合活動が認められるのは、就業規則や労働協約に規定がある場合、労使慣行上許されている場合、その他組合活動が使用者の業務命令よりも優越的な価値をもつと解される例外的な場合です。

・就業規則や労働協約に規定がある場合

 就業規則や労働協約によって就業時間中でも団体交渉や組合大会への出席などを許容する旨規定されている場合

 上司の許可を条件として組合活動のために離席することを認める旨規定されている場合

・労使慣行上許されている場合

 明文の規定がなくても、上司の許可を条件として組合活動を行うことや、許可がなくてもその組合活動をすることが労使慣行となっている場合

 使用者は合理的な根拠なしにこのような慣行を破棄することはできないとされています。

・その他、組合活動が使用者の業務命令よりも優越的な価値をもつと解される例外的な場合

 就業時間中の組合活動であっても、一定の条件を満たすときは正当性が失わないことがあります。

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 オリエンタルモーター事件(最高裁第2小判平成3.2.22)

「組合員が勤務時間中に職場を離脱して組合活動を行ったことについて、当該組合活動は会の組合の組織に対する切り崩しに対する抗議活動や対策協議のために行ったもので、組合運営に不可欠であるとともに、組合員が勤務時間中に組合活動をしなければならなかったのも会社の行為が原因となっていると考えられ、そして、就業時間中の組合活動により業務に具体的な支障を生じていないのであるから当該組合活動は正当な組合活動であるとして、当該組合活動を理由に会社が仕事上の差別取り扱いをしたことは不当労働行為であるとする原審判決を支持する。」

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 なお、就業時間中に組合活動ができる場合でも、その時間に相当する賃金は、ノーワーク・ノーペイの原則に従い、カットされるのが原則です。

 ただし、経理上の援助としての支配介入にはあたらないことがあります。

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 労働組合法第7条第3号;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
 ・・・・・」

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 労使間の協議又は交渉の時間について賃金を払うかどうかについては労使の話し合いにより決定することが可能です。





●便宜供与とその限界

 労働組合が労働委員会に不当労働行為を申し立て審問に出席する場合、労働協約に規定がなく労使慣行もないとき、公正な不当労働行為審査のために、労働組合の便宜を図って、年次有給休暇以外に、特別に有給休暇を認めるべきか。

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 日本では企業別労働組合が主流ですので、その組織を維持・強化し活動を存続させるためには、使用者から企業施設利用その他の便宜等を受ける高度の必要性が認められています。

 多くの企業で、使用者が、施設管理上、労務指揮上・労務の需給上・対価上及び事務処理上自己の負担をもって組合活動に便宜を与えることが許容されています。

 問題となった例として、組合休暇・チェックオフ・在籍専従の各制度や組合事務所や組合掲示板の各使用等が挙げられます。

 労使双方の合意や就業規則あるいは慣行上の制度として成立していれば、適法と解されております。

 労働組合法では便宜供与の有用性を認め、これを一般的に禁止しておりませんが、一方で、便宜供与の行き過ぎは、使用者に組合に対する支配介入を招き、組合を御用組合化しその使用者に対する影響力を相対的に弱体化せしめることを懸念し、そのような行き過ぎた便宜供与行為は支配介入行為として不当労働行為として禁止されています。

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 労働組合法第2条;

「この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
 ・・・・・
二  団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
 ・・・・・」

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 また、使用者が、労働組合に経費援助を行うことを、支配介入の不当労働行為として禁止しています。

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 労働組合法第7条;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
 ・・・・・」

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 経費援助の禁止の例外として、一定の限度で便宜供与が認められています。

・労働者が、労働時間中に、賃金を失うことなく使用者と協議・交渉すること

・組合の福利基金などに使用者が寄付すること

・最小限の広さの事務所を供与すること

・組合役員の在籍専従

・組合費のチェックオフ

 労働組合役員等の不当労働行為審問への出席は、使用者の不当労働行為の存在を立証し、排除することにありますから、労働組合本来の運営活動であることは明らかです。

 会社の就業時間内であれば、就業時間中の組合活動になり、この時間に賃金を支払えば、一般には経費援助に該当すると思われます。

 経費援助の除外の規定には含まれないと解されています。

 特別な事情もない場合、労働組合員の審問出席時間に対して、会社が特別に有給休暇を与え、その間の賃金を支払うことは、経費援助に該当し、不当労働行為とされるおそれがあります。

 なお、組合活動以外の用務のために出頭する時間の給与支払いは、一般に労働組合の運営のための経費の援助には該当しません。(昭和24.8.8労発第317号)





●ビラ貼りの正当性

 会社のロッカーなどに労働組合のビラ貼りをするのに、会社の許可が必要か。

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 組合活動にビラ貼りは不可欠です。

 組合活動と施設管理権との衝突があるとき、どう調整すべきでしょうか。

 考えるべきは、1つは、労働組合の組合活動の自由、もう1つは、使用者の施設管理権です。
 
 組合活動の自由は憲法第28条によって保障され、使用者の施設管理権は一定の制約を受けるという考え方があります。

 この考え方は、組合活動の必要性と業務運営や施設管理に対する支障の有無・程度とを考慮して、使用者は、正当と認められる組合活動について不当に抑圧しないよう、施設利用を受認する義務があるという受認義務説に結びつきます。

 次に、組合活動権は施設利用権までを当然に含むものではないという考え方があります。

 この考え方は、ビラ貼りの場所、態様、方法などからみて組合活動に必要があり、また業務運営や施設管理に実質的な支障を与えていない場合、無断で会社施設を利用することの違法性が阻却されるとする違法性阻却説に結びつきます。

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 判例には、労働組合の会社施設の利用は、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであるとして、受認義務説を否定したものがあります。

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 国鉄札幌運転区事件(最高裁第3小判昭和54.10.30)

「労働組合による企業の物的施設の利用は、本来使用者との合意に基づいて行われるべきものであって、組合または組合員において利用の必要性が大きいことの故に利用権限を取得し、使用者において右利用を受忍しなければならない義務を負うものではないから、使用者の許諾を得ず企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが使用者の権利濫用に当るような特段の事情ある場合を除き、職場環境を適正良好に保持し規律ある業務の運営態勢を確保するように物的施設を管理利用する使用者の権限を侵害し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されない。国鉄において、職員詰所に設置されている職員用ロッカーに、組合要求のビラを貼付したことが、正当な組合活動とはいえず、右を理由とする戒告処分が有効とされた。」

 目黒電報電話局事件(最高裁第3小判昭和52.12.13)

「休憩時間中の企業施設内でのびら配布について、休憩時間中でも施設管理を妨げる恐れ、他の労働者の休憩時間の自由利用を妨げる恐れがあるから、許可制は合理的な制約であり、事業上の秩序・風紀を乱す恐れがない特別の事情が認められる場合以外は、無許可のびら配布を理由とする懲戒処分は有効である。また、就業規則に違反するプレート着用についても、現実に職務の遂行が阻害される実害がなくても、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱すものであったとして、懲戒処分は有効である。」

 住友化学工業名古屋製造所ビラ配布等事件(最高裁第2小判昭和54.12.14)

「就業時間外に本件ビラを配布したものであり、また、その配布の場所は、上告会社の敷地内ではあるが事業所内ではない、上告会社の正門と歩道との間の広場であって、当時一般人が自由に立ち入ることのできる格別上告会社の作業秩序や職場秩序が乱されるおそれのない場所であった、というのであるから、被上告人らの右ビラ配布行為は上告人の有する施設管理権を不当に侵害するものではないとして、これに対してされた本件懲戒処分を無効であるとした原審の判断は、本件ビラ配布が正当な組合活動あるかどうかを判断するまでもなく、正当として是認できる。」

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 使用者は、正当でないビラ貼りに対して、その中止と撤去を求めるとともに、その行為者に対し就業規則に基づいて懲戒処分を行うことができることとされています。

 また、許諾を得ないで建物や窓ガラスなどにビラ貼りをおこなった場合、施設汚損の修復のための費用を求める損害賠償請求といった民事上の責任、さらには、器物損壊や建造物損壊罪などの刑事上の責任を問われることもあります。

 使用者の許諾を得ないままにビラ貼りをおこなった場合、その行為は違法な組合活動とされてしまう可能性があります。

 ビラ貼りで会社の施設を利用する場合、その管理権を有する使用者との間で合意が図られるよう話し合うことが必要です。





●第二組合への組合事務所の貸与

 2つの労働組合のうち、第一組合には社内施設を組合事務所として貸しているとき、第二組合から社内施設を組合事務所として貸してほしいとの要求があった場合、第二組合には貸与しないこととしてもよいか。

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 使用者は、労働組合に対し、当然に会社の施設を組合事務所等として貸与しなければならないものではなく、貸与するかどうかは原則として使用者の判断に任されています。

 そして貸与する場合、ふつう使用者が労働組合の運営のために経理上の援助を与えることは不当労働行為として禁止されていますが、最小限の広さの事務所の供与は除かれています。

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 労働組合法第7条;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
 ・・・・・」

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 また、使用者には、すべての場面で各労働組合に対し中立的な態度を保持し、その団結権を平等に尊重しなければならない義務があります。

 使用者は、それぞれの組合の活動や方針によって、一方の組合を好ましいものとしてその組織の強化を助けたり、他方の組合の弱体化を図るような行為をすることは許されません。

 2つの労働組合のうち、第一組合には社内施設を組合事務所として貸している場合、第二組合には貸与しないこととするのは、貸与しない合理的な理由がない限り中立保持義務に違反する恐れがあります。

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 日産自動車事件(最高裁第1小判昭和62.5.8)

「使用者が、一方の組合に組合事務所等を貸与しておきながら、他方の組合に対して一切貸与を拒否することは、そのように両組合に対する取り扱いを異にする合理的な理由が存在しない限り、他方の組合の活動力を低下させその弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると解するのが相当である。」

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 なお、貸与する組合事務所の大きさは、労働組合の規模などによって合理的に決められるべきであり、必ずしも既存の組合に貸与している事務所と同じ大きさでなければならないわけではありません





●解雇後に結成した労働組合と団体交渉

 勤務成績不良として解雇した複数の従業員が労働組合を結成し、解雇を不満として団体交渉を求めてきたとき、交渉にも応じる必要があるか。

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 労働組合を結成することは、憲法上認められた労働者の権利であり、また、労使紛争のような私人間の紛争は、自主解決が基本です。
 
 労働組合法では、労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者とされ、失業者も含むものとされています。

 したがって、退職者も労働組合に加盟できる労働者といえます。

 一般的に、退職した者と使用者との間の雇用関係は終了し、雇用する労働者には該当しませんが、解雇・退職など労働契約関係の継続の有無や、未払い賃金・退職金など労働契約の精算について争いがある場合は、雇用関係が消滅したとは言えず、その争いの範囲内において、雇用する労働者であると解されています。

 労働組合が解雇基準の適用や解雇の条件について交渉を求めてきた場合、たとえ対象となる労働者が解雇の通知を受けていても、使用者は正当な理由なく団体交渉を拒否することはできないものと解されています。

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 労働組合法第7条;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 このことは、被解雇者が解雇された後に組合に加入し駆け込み訴えを行った場合でも、同様と解されています。

 なお、解雇された者が加盟した合同労組からの団交申し入れは、その退職した従業員が解雇後、社会通念上合理的な期間になされる必要があり、著しく時期を経過した団交申し入れには拒否出来るものとされています(東洋鋼板事件 中労委命令昭53.11.15)。

 解雇を不満として社会通念上合理的な期間に団体交渉を申し入れている以上、被解雇者は解雇に応じていないということで、解雇そのものを交渉事項とする団体交渉には応じる必要があります。

 解雇された者がその解雇の効力を争っている場合、雇用関係が消滅したことを理由として団体交渉を拒否することは、不当労働行為になるおそれが非常に大きいと言えます。
    
 団体交渉に応じない場合、不当労働行為として地方労働委員会や裁判所で争われる可能性もでてきます。

 使用者は労働組合を認め、必要な資料等を提示して、十分に納得のいく話し合いを、誠意をもって継続していくことが望まれます。

 ただし、使用者は団体交渉には応じる義務はありますが、解雇を撤回しなければならないというものではありません。

 また、誠意をもった団体交渉を継続しても、自主解決が困難な場合には、使用者側から地方労働委員会にあっせんを申請することも可能です。





●第2組合の結成と複数組合がある場合の団体交渉

 従来から従業員の多数で組織する労働組合があるもののその方針に不満を抱いている者たちで新たに別の組合を結成するに際して、手続きのこと、組合員のこと、団体交渉のことについて

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 労働組合の結成については、行政機関などの許可や届出は必要ではなく、労働組合法に定める一定の要件を実質的に備えているだけで労働組合としての法的保護が与えられます。

 労働者の自由意思により結成することができますので、使用者の承認などを受ける必要はありません。

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 労働組合法第2条;

「この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
 ・・・・・」

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 組合員の範囲については、労働組合が独自の判断で自主的に決めるべきことです。

 新たに結成する組合において、既存組合が非組合員としている者を組合員に含めることは可能です。

 ただし、労働組合は、使用者の利益代表者の加入を認めることはできません。

 また、人種、宗教、性別、門地または身分を理由として組合加入を拒否することは許されません。

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 労働組合法第5五条;

「 ・・・・・
2 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。
 ・・・・・
四  何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
 ・・・・・」

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 次に、同一企業内に複数の労働組合が併存する場合、各組合は、それぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されています。

 使用者は、労使関係のすべての場面で、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重しなければならず、組合の性格、傾向や従来の運動路線の違いによって差別的な取扱いをしてはなりません。

 各組合は、それぞれ自由な意思決定に基づいて、労働協約を締結し、あるいは締結を拒否する権利を有します。

 併存する組合の組合員数に大きな開きがあるときは、多数組合の交渉力の方が大きい点を考え、使用者が多数組合との交渉及びその結果に重点を置くようになるのは自然のことであり、一概に不当とすることはできません。

 団体交渉の結果、各組合の間に労働条件に関し差異を生じる結果となったとしても、それは、使用者と労働組合との間の自由な取引の場において、各組合が異なる方針や状況判断に基づいて選択した結果が異なるに過ぎず、差異が生じたことをもって、直ちに不当な差別ということはできません。

 なお、労働協約の効力は、原則として当該労働協約を締結した労働組合とその組合員にしか及びませんが、複数組合がある場合には例外的な規定があります。

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 労働組合法第17条;

「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。」

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 この規定は、多数組合とは別に組織されている少数組合にも及ぶのかどうかが問題となります。

 学説・判例は、拡張適用を肯定する説と否定する説とに分かれています。

 憲法の保障する団体交渉権を少数組合にも保障するという見地から、否定説が有力となっています。

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 日本メール・オーダー事件(最高裁第3小判昭和59.5.29)

「会社側が一時金を上積みする前提として、生産性向上に協力することという前提条件は抽象的で具体性を欠くものであり、しかも当時の社会的状況の中では労働強化等につながるという見方を否定できないという意味で、問題のあるものであったにもかかわらず、会社側は具体的に何をすれば良いのかについて十分な説明をしていない。したがって、少数組合が受諾できないとしたことには理由があり、反面、会社側がこのような前提条件を付することには合理性がない。組合は、会社側が合理性のない条件に固執しているため、やむなく受諾拒否を選択したのであって、会社の交渉の仕方に原因がある。会社側は、少数組合が受諾しないことを予想しながら敢えてこの前提条件を提案し、これに固執したものであり、しかも、受諾拒否の結果、一時金が支給されず、組合内部に動揺を来し、ひいては組合弱体化を招くことは、容易に予想できたものであり、組合弱体化の意図を有していたとの評価を受けてもやむを得ない。」

 日産自動車事件(最高裁第3小判昭和60.4.23)
 
「不当労働行為に当たるかどうかは、単に、団体交渉において提示された妥結条件の内容やその条件と交渉事項との関連性、条件に固執することの合理性についてのみ検討するのではなく、交渉事項が発生した原因及び背景事情、交渉事項が労使関係において持つ意味、交渉事項に係る問題が発生したのちに労使がとってきた態度等の一切の事情を総合勘案して、判定しなければならない。会社が少数組合員に対し残業を一切命じないとする既成事実の上で、組合との団体交渉を誠意をもって行わず、組合との間に協定が成立しないことを理由として、所属組合員に残業を命じないとしていることの主たる動機・原因は、少数組合員を長期間経済的に不利益な状態に置くことにより、組織の動揺や弱体化を図ろうとの意図に基づくものであったと推断されてもやむを得ない。」

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 事業所内に複数の労働組合が存在する場合、たとえ少数組合であっても当然に団体交渉権を有しているものと考えられます。

 独自に団体交渉を行い、労使交渉を通じて自由な意思決定に基づき合意形成を図っていくことが可能と解されます。





●上部団体との団体交渉

 従業員が企業内組合を結成し団体交渉の申入書を提出してきましたが、申入書に企業内組合と企業内組合の上部団体の連名になっている場合、企業内組合とは団体交渉を行い上部団体とは団体交渉しなくても構わないか。

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 労働組合法は、労働者が労働組合を結成・運営したり、使用者と団体交渉するなどの労働者の権利を保護しています。

 一方、経営者の有する権利として、業務命令権、人事権、施設管理権があり、これらの三権は経営者の専決事項です。

 双方の団体交渉の手続きや進め方などのルールには、法律上の規定はありませんが、労使間での話し合いにより自主的に決定しておくべきです。

 その際、団体交渉事項が、たとえ企業内の問題のみであるとしても、企業内組合の上部団体にも、企業内組合とともに団体交渉をする権利があると一般に考えられています。

 企業内組合とその上部団体から共同して同じ事項について団体交渉の申し入れがあった場合には、その申し入れを拒否することはできません。

 ほかに正当な理由もなく上部団体との団体交渉を拒否すると、不当労働行為になります。

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 労働組合法第7条;

「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 使用者は上部団体の団体交渉の出席を認め、組合は団体交渉出席者事前通知において上部団体出席者を明示するとよいでしょう。

 ただし、ここでいう上部団体とは、加盟している企業内組合に対して実質的に統制力を持っている組織でなければなりません。

 企業内組合の加盟団体でも単なる連絡協議機関にすぎないものには団体交渉をする権利はありません。

 また、企業内組合と上部団体が同じ事項について別々にそれぞれ団体交渉を申し入れてきた場合には、企業内組合と上部団体との間でその団体交渉に対する権限が調整されて一本化されるまでは、一時的に交渉を拒否できます。

 同一事項について、2つの労働組合と別々に交渉が行われた結果、内容が矛盾する協定が締結されるという不合理が発生するおそれがあるからです。

 なお、労働組合または労働組合員は、不当労働行為であると思われる行為があった場合には、労働委員会へ救済を求めて申立てをすることができます。

 労働委員会は、労働組合と使用者を対象とし、中立・公平な立場に立って、その労使間の紛争解決を援助するための独立した行政機関で、国(中央労働委員会)と都道府県(都道府県労働委員会)に設置されています。

 申立てがなされた場合には、労働委員会は事実関係を審査して、使用者の行為が不当労働行為であるか否かを判断します。

その結果、不当労働行為であると判断した場合には労働者側を救済する命令を発します。





●権限のない者による団体交渉

 会社との団体交渉の際、会社側の交渉担当者は即答せず持ち帰って検討すると繰り返すばかりで一向に進展しない場合、直接、社長と交渉したくても社長が出てこないのは誠実な団体交渉を行っているといえないのではないか。

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 会社の代表者は、直接団体交渉を行い、妥結し、協約を締結できます。

 代表者以外の者も、その会社において交渉の中で問題となっている事項につき権限を有しているときや、交渉についての権限を与えられているときは、交渉担当者となることができます。

 会社の従業員でない弁護士、経営者団体の役員等も、会社からの委任があれば団体交渉の交渉担当者となることができます。

 誰に権限を与えて交渉担当者とするかは会社側の自由ですので、社長の出席を強制することはできません。

 問題は、使用者が雇用する労働者の代表と団体交渉をすることを正当な理由なく拒んだり、誠意ある交渉態度をとらないことがあるかどうかです。

 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒んだり誠意ある交渉態度をとらないことは、不当労働行為として禁止されています。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 交渉担当者には、必ずしも、妥結権が付与されなければならないということはありませんので、その権限や委任の範囲を超えた要求については、持ち帰って検討することもあります。

 しかし、交渉権限が当然にあるはずの職務にありながら、あるいは、委任された範囲内での交渉でありながら、持ち帰って検討することを繰り返した場合は、交渉担当者に実質的な交渉権限が付与されていなかったとして、不誠実な団体交渉と判断されます。

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 大阪特殊精密工業事件(大阪地判昭和55.12.24)

「賃上げ及び一時金について決定権のない専務取締役による団交は、誠実に団交をなしたものといえず、速やかな団交を命じた労委命令は相当である。」

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 また、持ち帰って検討することばかりを繰り返し、交渉が一向に進展しない場合や、なぜその場で回答できないかについて説明を尽くさない場合なども、不誠実な団体交渉をおこなったとして、不当労働行為に該当する可能性があります。

 そして、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、労働委員会が調査や審問を行うことになります。

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 労働組合法第27条;

「 労働委員会は、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。この場合において、審問の手続においては、当該使用者及び申立人に対し、証拠を提出し、証人に反対尋問をする充分な機会が与えられなければならない。
2 労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない。」

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●工場閉鎖に関する団体交渉

 会社が、近い将来、勤務中の工場を閉鎖すると発表したとき、労働組合として、工場閉鎖反対を議題とする団体交渉の申し入れは可能か。

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 工場の閉鎖に関して、労働組合から、閉鎖決定反対、工場存続の条件の明示、雇用責任の明確化などの要求が出されることがあります。

 しかし、工場閉鎖の決定などの企業の管理運営に関する事項については、原則として、団体交渉に応じるよう使用者に強制することはできないとされています。

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 昭和32.1.14発労第1号(抜粋)旧労働省通達

「法は、いかなる場合にも、使用者に団体交渉に応ずべき義務を負わせているのではない。使用者は、正当な事由があれば団体交渉の全部又は一部を拒否しうる。主な場合を例示すれば次のとおりである。
イ、交渉の目的物に関して
(一)交渉の目的物がもともと団体交渉になじまない性質のものである場合他の使用者と労働組合間の紛争のように、その使用者が処分権を持たない事項(同情争議)。 労働条件や労働者の待遇の基準と明確な関連を持たない企業の経営方針、企業の役職員の人事等、使用者に処分権があつても、およそ労働協約になじまない事項。 かような事項に関する交渉は、もともと法の助成せんとする団体交渉ではない。」

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 したがって、使用者は、工場閉鎖反対のみを議題とする団体交渉は拒否することができます。

 ただし、工場閉鎖に伴う組合員の労働条件変更や処遇については、使用者には団体交渉に応じる義務があります。

 勤務地の変更、異動後の賃金、希望退職の条件などがその事例です。

 工場閉鎖に伴う組合員の労働条件変更や処遇を交渉事項とする団体交渉を、正当な理由なく使用者が拒否した場合には、不当労働行為となります。

 使用者が団体交渉を正当な理由なく拒んだり誠意ある交渉態度をとらないことは、不当労働行為として禁止されています。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 労働委員会にあっせん申請や不当労働行為救済申立てを行うか、裁判所に提訴して解決を図ることができます。

 労働委員会は、労働組合と使用者を対象とし、中立・公平な立場に立って、その労使間の紛争解決を援助するための独立した行政機関で、国(中央労働委員会)と都道府県(都道府県労働委員会)に設置されています。

 裁判所で行われる裁判の形式には、判決、決定、命令があります。





●団体交渉のルールづくり

 団体交渉をおこなっていくには組合とその手続きや進め方などのルールを決めておくべきか。

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 労働組合結成の主たる目的は、使用者と実質的にも対等な立場に立って労働条件などの交渉をおこなって労働者の地位の向上を図ることにあります。

 団体交渉は、労働組合と使用者との間で、自主的な交渉を通じて、合意形成を図るためのものです。

 交渉の結果、労使間で合意が得られれば、書面により労使双方が 確認しておく場合が多いようです。

 団体交渉における手続きや進め方などのルールについては、法律上の規定はありません。

 基本的には、労使双方の話し合いにより自主的に決定されるべきものです。

 団体交渉のルールは、労使が相互の基本的権利及び義務を尊重し、労使関係を合理的に調整し、組合員の労働条件その他待遇について団体交渉を行う場合のルールを定めることを目的とします。

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 事例;

・団体交渉の申し入れ

 団体交渉の申し入れがあった場合は、原則として、申し入れを受けた日から 日以内に開催日時及び場所の調整を開始し、申し入れた日から 週間以内に団体交渉を開催することを原則とする。

・団体交渉の出席者

 団体交渉の出席人数は、原則として、会社と組合それぞれ 名以内とする。

 団体交渉に会社と組合双方の代表以外が出席する場合は、上記の出席人数に含めるものとする。

・団体交渉の時間

 団体交渉は、原則として、所定労働時間内に行う。

 組合の出席者である従業員については、総合計で年間 時間内に限り、団体交渉時間は就業したものとみなす。

 上記に関する手続きについては、労使協議の上、その細則を定めるものとする。

・団体交渉の開催場所

 団体交渉は原則として労使双方に関係しない場所で開催し、原則として、会社がその費用を負担する。

・団体交渉の議事の記録

 団体交渉の議事は、原則として、それぞれが録音する方法で記録する。

・団体交渉における合意の確認

 団体交渉事項について労使が合意した場合は、これを成文化し、労使双方記名押印して確認するものとする。

・この協定の有効期間は、  年  月  日から  年  月  日迄とする。

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 商大自動車教習所事件(東京高裁判昭和62.9.8)

「会社は団交場所、時間、人員に関する団交ルール中、時間、人員について柔軟な対応が可能であったにもかかわらず、3条件全てのルール設定に固執したのは、団交ルールが設定されていないことを理由とした団交拒否である。」

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●誠実交渉義務と団体交渉拒否の正当理由

 賃金改定問題について使用者と組合の主張が平行線をたどっていて互いにこれ以上譲り合う気が全くない状態で団交が中断されている場合、新たな団交の申入れを拒否することはできないのでしょうか。

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 団体交渉は、労働組合法に基づいて設立された労働組合が、使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉することです。

 使用者は、誠実交渉義務により、労働組合より申し入れられた団体交渉を正当な理由なくして拒否する事はできず、また、第三者へ委任する事もできません。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」

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 労働組合は労働組合法第6条に基づき団体交渉を第三者へ委任する事が可能で、これをもって、上部や外部の労働組合が交渉に参加する権限を持ちます。

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 労働組合法第6条;

「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」

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 また、使用者は、この交渉の過程で、合意の形成を目指して誠実に交渉に対応する義務を負います。

 しかし、使用者は、どんな場合であっても、団交申入れに応じなければならないというわけではなく、正当な理由がある場合には、申入れを拒否することができます。

 正当な理由が認められるのは次のような場合です。

・労働組合や上部団体が労組法2条の適格要件を満たしていない場合

・交渉を求められた事項がそもそも団体交渉の事柄ではない場合

・組合員以外の労働者の労働条件に関する要求の場合

・団体交渉の要求内容に違法性が認められる場合や、政治目的など労使交渉になりえない要求の場合

・要求内容は正当だがその手段に一部でも違法性が認められる場合

・労使双方誠意を尽くして団体交渉を続けたにもかかわらず、双方の主張が対立して、相互に譲歩の意思が全くなくなった場合など

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 労働組合法第2条;

「 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一  役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二  団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三  共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
四  主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」

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 池田電器事件(最高裁第2小判平成4.2.14)

「使用者が会社再建と解雇撤回を求める組合と2ヶ月間に5回の交渉を行った場合で、これ以上交渉を重ねても進展する見込みがない段階にいたった場合は、使用者が交渉を打ち切ることが許される。」

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ただし、会社が、交渉において誠実交渉義務を尽くしたか否かは、交渉の時間・回数は十分か、説明・説得は十分かなどの要素により、客観的に判断されるものです。

 誠実義務に違反するのは次のような場合です。

・使用者が、組合の要求を拒否するだけで、その根拠となる資料や対案を示さない場合

・交渉事項について決定権限のない者を出席させ、見せかけだけの交渉を行う場合

・合意の前提条件として合理性のない条件を提示して固執する場合など

 なお、交渉打ち切り後も、交渉再開が有意義となるような事情の変化が生じた場合には、使用者は、交渉再開に応じる義務があります。





●合同労組加入者の名簿提出

 会社に労働組合がなく地域の合同労組に加入して団体交渉を要求したところ、会社から組合員名簿の提出がなければ交渉に応じないという回答があった。

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 合同労組は、ある地域で、労働者が、企業や職種に関係なく個人でも加盟できる労働組合です。

 産業別に組織されるもの、職能別に組織されるもの、産業別・職能別に関係なく組織されるもの(一般合同労組)があります。

 企業内労働組合とは違い、所属企業を問わず個人単位で加盟できます。

 このため、一人労働組合とも言われます。

 正社員だけでなく、契約社員・パートタイマー・派遣労働者、さらに管理職まで加入できるものがあります。

 しかし、なかには実態のわからないものもあり、そのことが対応を難しくする原因になっています。

 一般的に、一人労働組合を通じて、一部の従業員の問題に対処するよりも、従業員の多数が加盟する労働組合を結成させて、最大公約数的な諸問題の解決を模索する方が公平性の観点から言えば、円滑な労使関係の構築につながります。

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 そもそも、労働組合は、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを目的として組織する団体であれば足り、特定企業の労働者によって組織されている必要はありません。  

 そして、一人でも加入できる労組も、労働組合法上の資格要件を満たしていれば、労働組合法上の労働組合としての法的権利は成立します。

・労働組合の代表者は、労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有します。

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 労働組合法第6条;

「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」

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・使用者は、雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由がなく拒むことはできません。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 したがって、合同労組は、組合員のために、その組合員を雇用する使用者に団体交渉を求めることができます。

 使用者は、団体交渉を拒否すると不当労働行為とされる恐れがありますので、基本的には応じる必要があります。

 ただし、団体交渉応諾義務は、交渉のテーブルに着き誠実に交渉を行う義務であって、労組の要求に応じる義務ではありません。

 誠意を持って協議・交渉をして円満な解決が図れる場合もありますし、もし協議・交渉が決裂しても団体交渉拒否ということにはなりません。

 使用者は、団体交渉の要求があった場合、自己の雇用する労働者が加入しているかどうかを確認するために、組合員名簿の提出を求めることがあります。

 しかし、労働組合としては、組合員の中に当該使用者が雇用する労働者が存在することを、少なくとも一人の組合員名を明らかにするなど、何らかの形で明らかにすればよく、組合員名簿を提出することは必要ないとされています。  

 そして、提出を拒否された場合、提出拒否のみをもって団体交渉に応じないことは、不当労働行為となる可能性があります。

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 千代田工業事件(大阪地裁判昭61・10・17)

「横断的に組織された労働組合であっても、労組法2条の用件を満たすかぎり、適法な労働組合であり、組合員の中に会社が雇用する労働者が含まれているかぎり、組合は右労働者の代表者として、会社と団交をする権利を有する。不当労働行為事件における労働委員会の権限には、認定された事実に対する労働組合法等の解釈、適用という準司法的権限も含む。労働委員会は団交拒否の不当労働行為事件において、その裁量に基づき、単に団交拒否を禁止するにとどまらず、団交の作為を命じうる権限を有する。労働組合は、解決可能な事項である限り、組合自身のためだけでなく、組合員のためにも使用者と団交をする権限を有する。労働委員会は、裁判所による司法救済とは別に、独自の立場で行政救済を遂行する職責と権限を有するのであり、同一事案に関する裁判所の事実認定や判断に何ら拘束を受けるものではない。労働組合制度についての独自の見解に固執して組合を認めず、解雇問題に関する団交を拒否したことは不当労働行為である。」

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 なお、団体交渉の内容によっては、組合員の氏名や人数等が明らかでないと有効な交渉ができない場合も考えられます。

 この場合でも、団体交渉の開始に当たって必ずしも組合員名簿を提出する必要はなく、団体交渉の進展情況に応じて、必要な範囲で組合員の氏名等を明らかにすればよいとされています。





●団体交渉における経理資料の提出

 労働組合から会社の経理資料の提出を要求してきたとき、経理資料を提出しなければならないか。

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 団体交渉においてどのような事項を交渉の対象にできるかについては、明文の規定がありません。

 団体交渉の対象範囲は、一般的に労働者の労働条件、その他労働関係に直接関係するものについて、認められています。

 団体交渉の対象となるのは、賃金、労働時間、休日、休暇などに関する事項、団体交渉の手続き、就業時間中の組合活動、組合事務所の供与、争議行為の予告などに関する事項などです。

 団体交渉の対象とならないのは、政治的主張、使用者に関係のない他の企業に関する事項、使用者に処分権限のない事項、使用者が処分できる事項であっても、労働条件に全く関わりをもたない純粋な経営権事項などです。

 しかし、会社組織に関すること、管理者の人事、設備の更新、生産の方法など経営に属する事項でも、労働条件その他の待遇に影響ある場合にのみ対象事項とすることができるとされています。

 労働組合に対し説明する場合には、たとえ組合の要求に応えられない場合でも、誠意をもって説明する義務があり、また、納得させるために努力する必要があります。

 誠意をもって団体交渉に応ずべき使用者の義務を怠った場合、労働組合法に規定する不当労働行為に当たるとされています。

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 労働組合法第7条

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 使用者が、団体交渉で労働組合の要求に対し、単に諾否の結果を答えるのみでは、誠意ある交渉態度としては十分とはいえません。

 使用者は、団体交渉において、その対象となる事項について、要求に関連する諸資料、諸事情を十分明示、説明することが要請され、会社の経営権に関する資料であっても提出しなければならない場合があります。

 提出しなければならない資料には経営権からの限界がありますが、一般に妥当と認められている程度の経理資料の提出義務は信義則上あると考えられます。

 したがって、損益計算書、貸借対照表だけでは十分とはいえず、回答の算定根拠、さらには総収益及び総支出、人件費の推移等についての過去の実績及び将来の見込みも対象になると考えられます。





●唯一交渉団体約款と別組合との団体交渉

 会社にA、B2つの労働組合がありA労働組合との労働協約には唯一交渉団体約款がある場合、B労働組合から団体交渉の申入れ応じないのは不当労働行為になるか。

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 労働協約の中で、会社はこの労働組合を会社内における唯一の交渉団体と認め、この労働組合以外のいかなる団体とも団体交渉を行わないと規定することがあります。

 このような約款の締結は、

・使用者側としては上部団体や他の労働組合との団体交渉を避けること

・労働組合側としては第二組合ができないようにけん制し会社における独占的な地位を占めること

を意図して行われているようです。

 このような約款は、会社と団体交渉できる労働組合が事実上1つしか存在しない場合は、使用者と労働組合との間の現状を確認する程度の意味はもちますが、第二組合が存在する場合は、憲法で保障されている団体交渉権を否定することになり無効であるとされています。

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 憲法第28条;

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

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 また、労働組合法によれば、正当な理由があれば、使用者は団体交渉を拒むことができるのですが、理由となる約款自体が無効とされていますので、唯一交渉団体約款があることは団体交渉拒否の正当な理由にはなりません。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 したがって、唯一交渉団体約款があるからといっても、そのような約款は法律的には無効であり、約款があることは団体交渉拒否の正当な理由にはなりませんので、別組合との団体交渉にも誠実に応じるべきです。

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 三田運送事件(中労委命令昭56・11・18)

 別組合を脱退した15名が分会を結成し、団交を申入れたところ、別組合との唯一交渉団体約款が存在することを理由に団交に応じなかったことが争われた事件で、別組合との間の唯一交渉団体約款を理由に団交に応じなかったことを不当労働行為とした初審判断が相当であるとされ、団交応諾を命じた初審命令を支持し、再審査申立てを棄却した。

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●さし違え条件

 団体交渉において、労働組合の要求を受け入れる代わりに何らかの条件を付けて回答することは可能か。

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 労使交渉はその名のとおり交渉ですから、使用者が労働組合からの要求に対して何らかの条件を付けることは可能です。  

 しかし、労働組合の運営に介入することになるような条件を提示することは、不当労働行為として違法であると判断されることがあります。

・回答に生産性向上に協力するとの前提条件を付した事例

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 日本メール・オーダー事件(最高裁第3小判昭和59.5.29)

「会社が一時金の上積み回答に、生産性向上に協力するとの前提条件を付したのは、組合が前提条件を受諾しないことを予測して提案し、それに固執した結果、組合員が一時金の支給を受けられなかったことは不当労働行為である。」

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・争議行為や抗議行動の禁止を内容とする平和協定の締結を迫った事例

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 葦原運輸機工事件(大阪地労委命令昭47・12・27)

「争議行為や抗議行動の禁止を内容とする平和協定の締結を迫り、これの拒否を理由に一時金を支給しなかった会社の行為は、組合組織の弱体化を企図してなされたものであるばかりでなく、組合員を不利に取扱うもので7条1号、3号に該当するものといわざるを得ない。」

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 次のような場合には、不当労働行為と判断される可能性があります。

・提示する条件の内容が労働組合を弱体化する意図があると判断される場合

 労働組合法第7条第3号で使用者の行為として禁止されている支配介入に該当し、不当労働行為と判断される可能性があります。

・労働組合を弱体化する意図があると判断された条件を受け入れないことを理由に一時金を支給しないような場合

 労働組合法第7条第1号で禁止されている不利益取り扱いに該当し、不当労働行為と判断される可能性があります。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
 ・・・・・
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
 ・・・・・」

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●管理職組合との団体交渉

 管理職のみで組織する労働組合から管理職手当の減額を交渉事項とする団体交渉の申入れがあったとき、団体交渉を拒否しても不当労働行為にならないか。

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 労働組合法は、使用者は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒む行為をしてはならないと定めています。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 この規定に違反して団体交渉を拒否した場合には、労働組合側は、不当労働行為として、労働委員会に救済を求めることができます。

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 労働組合法第27条;

「 労働委員会は、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。この場合において、審問の手続においては、当該使用者及び申立人に対し、証拠を提出し、証人に反対尋問をする充分な機会が与えられなければならない。
2 労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない。」

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 ただし、このような救済を受けるためには、その前提として労働組合法上の労働組合と認められることが必要です。

 会社において管理職に就いている者も、たとえ、その管理職が使用者の利益代表者と判断される者であっても、労働組合法に規定する労働者に含まれます。

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 労働組合法第3条;

「この法律で労働者とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」

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 管理職のみをもって組織する団体も、憲法で規定する団結権・団交権・争議権を保障される労働組合ということになります。

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 憲法第28条;

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

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 しかし、憲法上、労働組合と認められる管理職組合が、当然に労働組合法が特に認めた利益を受けられる労働組合であるか否かについては、即断できません。

 使用者の利益代表者の参加を許す組合は、使用者との関係において自主性を欠くとして労組法上の労働組合ではないとされているからです。

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 労働組合法第2条;

「 この法律で労働組合とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
 ・・・・・」

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 使用者の利益代表者の範囲は、一般に、その範囲をむやみに拡大して解釈すべきではなく、限定的、抑制的に判断すべきであるとされています。

 会社の定める管理職がすべて利益代表者に該当するとは限りません。

 また、ある一定の職名以上の労働者が一律に利益代表者になるというものでもありません。

 具体的にのような場合が利益代表者になるかの判断はなかなかむずかしい問題で、結局のところ、労働者の担当する職務の実質的内容に即して、個別的・具体的に判断するほかはありません。

 労働委員会や裁判所はその範囲を厳しく限る傾向にあります。

 裁判例;

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 中労委(セメダイン)事件(最高裁第1小決平成13.6.14)

「いわゆる管理職組合からの断交拒否に係る救済申し立てについて、当該組合を労組法上の組合と認定して使用者に断交応諾を命じた中労委命令を支持する原審判決を維持する。」

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 したがって、使用者の利益代表者の参加を許す労働組合も労働組合法にいう労働者の代表者に含まれ、使用者は利益代表者の参加を理由として団交拒否できないと考えられます。

 ただし、当該利益代表者が、当該交渉事項に関して使用者の機密事項を漏洩している場合など、適正な団体交渉が期待できないような特別の事情がある場合には、団交拒否の正当な理由となりえます。





●派遣労働者と派遣先会社との団体交渉

 派遣先会社での労働条件を改善するため派遣社員で労働組合を結成し派遣先会社に団体交渉を申し入れることはできないか。

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 派遣労働者とは、派遣元会社の命令を受けて派遣され、派遣先会社の指揮命令を受けて、労働に従事する労働者をいいます。

 派遣労働者が労働契約を結んでいるのは派遣元会社であって、派遣先会社ではありません。

 派遣労働者にとって労働契約上の使用者とは派遣元会社であり、派遣先会社は派遣労働者に対して仕事上の指揮命令権を持つに過ぎません。

 派遣労働者の賃金引上げや一時金の支給を交渉事項とする団体交渉の相手方は、労働契約の相手方である派遣元会社となります。

 しかし、派遣先会社が派遣労働者の勤務時間の割振りや労務提供の態様及び作業環境などを現実に決定している場合には、このままでは妥当性を欠くことになりそうです。

 また、労働組合法では、使用者が雇用する労働者の代表者との団体 交渉を正当な理由がなくて拒むことを不当労働行為として禁止しています。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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 この不当労働行為制度上の使用者は、制度の目的に即して労働基準法上の使用者や労働契約上の使用者よりも広い範囲で認められています。

 団体交渉に応ずべき使用者は、労働契約の当事者に狭く限定されることなく、労働条件について実質的に支配的な地位にある者と広く捉らえるべきです。

 したがって、労働契約の当事者である使用者でなくても労働条件の決定権限や監督権限を現実に持っている者は団体交渉の当事者である使用者と解される場合があります。

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 油研工業事件(最高裁第1小昭和51.5.6)

「油圧器の製造販売を目的とする会社が、油圧装置の設計図を作成させるため、社外の設計請負業者から長期にわたりその従業員の派遣を受け、これをいわゆる社外工として会社の作業場内で就労させている場合において、右請負業者が実質的には社外工の単なるグループにすぎないものであつて独立の使用者としての実体を有せず、各社外工はそれぞれ個人の技能、信用によつて会社に受け入れられているものであり、その勤務及び作業に関しては専ら会社が自己の従業員と同様に指揮監督を行い、また、社外工の賃金額についても会社が実質的にこれを決定しているなど判示のような事情があるときは、会社は、右社外工に対する関係において労働組合法七条の使用者にあたる。」

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 労働者派遣については、現実には労働者派遣法による合法派遣と、請負形式を偽装した違法派遣、さらに実体のある請負形式等が混在しています。

 派遣的労働関係では、合法・違法を問わず、また、請負の実体があるか否かにかかわらず、派遣先会社が派遣労働者の勤務時間の割振りや労務提供の態様及び作業環境などを現実に決定している場合には、それらの労働条件について派遣先会社にも使用者性が認められ、団体交渉の当事者となります。

 したがって、派遣労働者の労働組合が団体交渉を求めたとき、派遣先や受入れ企業は、団体交を拒否することができず、労働組合法の定める使用者としての責任を負担すると考えられます。

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 朝日放送事件(最高裁第3小判平成7.2.28)

「会社は、請負3社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき管理しており、その請負3社の従業員の基本的な労働条件について、雇用主である請負3社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労組法7条の「使用者」に当たると解するのが相当であり、自ら決定できる勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等に関する限り、正当な理由がなければ団交を拒否できないというべきであるから、使用者でないことを理由とする本件団交拒否は正当な理由がなく、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。」

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●別件で係争中の組合からの新たな団交申入れ

 現在、労働組合との間で不当労働行為事件が係争しているとき、同じ労働組合から新たな案件で団体交渉の申入れがあった場合、新たな案件について団体交渉を行わないことができるか。

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 別件が係争中の段階で新たな案件に関する団体交渉をおこなっても、協定締結の可能性は少ないと思われますが、労使間で協議・交渉を尽くすことはそれ自体意味があります。

 したがって、先行する賃金差別問題の結果如何では今後の給与問題の基本方針や団体交渉の進め方に大きな影響を及ぼすことがあり、また、妥結結果について新たな不当労働行為の申立てがなされる恐れがあるときでも、新たな事項についての団体交渉を拒否することはできません。

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 松蔭学園団交拒否不当労働行為再審事件(中労委平成16年12月13日決定)

「組合が、昭和55年の組合結成以来63年度まで、学園と団体交渉を重ね、毎年交渉妥結の結果を協定書に取りまとめ、その内容に従って支給を受けてきた給与及び夏季・年末一時金について、後にそれが組合差別の不当労働行為であるとして救済申立てをし、東京地労委においてその主要部分について救済命令が発せられた(13年命令、別件再審査事件)ことから、学園は、その決着を見るまでは、組合と平成12年度及び13年度の給与引上げ等にかかる団体交渉を行っても意味がないという。
 しかしながら、組合がいったん学園と妥結、協定した結果について、後に、それが不当労働行為によるものとして救済申立てをした場合、学園としては、それが不信義と思われるのであれば、その旨、ないしはそれが不当労働行為に当たらない旨を、当該救済申立事件において主張、立証すればよく(当委員会に係属中の別件再審査事件において、学園は現にその趣旨の主張をしていることは、当委員会にも、本件当事者間にも明らかである。)、そのような労使間の経緯があるからといって、そのことを理由に、新たに申入れを受けた新たな事項についての団体交渉を拒否することはできない。」

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 会社としては、組合を納得させるに必要な合理的理由と資料をもって団体交渉の申入れに応ずべきであり、応じない場合は労働組合法に規定する不当労働行為に該当します。

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 労働組合法第7条;

「 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
 ・・・・・
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
 ・・・・・」

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●非組合員に関する問題と団体交渉応諾義務

 労働組合から、非組合員であるパートタイマーやアルバイトの賃金アップを交渉事項として団体交渉の申入れがあった場合、団体交渉を拒否しても問題がないか。

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 労働組合法では、団体交渉についての交渉権限を次のように規程しています。

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 労働組合法第6条;

「 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」

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 団体交渉は労働組合又は組合員のために行われるもので、非組合員のために行われるものではありません。

 原則として非組合員に関する問題は団体交渉事項とはならないとされています。

 ただし、例外があります。

 非組合員に関する問題であっても、それが組合員の労働条件に直接影響を及ぼすような場合には、団体交渉事項に該当し、使用者は団体交渉を拒否できません。

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 林兼産業事件(大阪地労委命令昭和57.10.6)

 会社が非組合員である臨時工・パートタイマーに関する事項は団交事項になりえないとして臨時工・パートタイマーの労働安全問題に関する団交を拒否したことについて、職場の安全対策は単に臨時工・パートタイマーの問題にとどまらず、同一職場で業務に従事している組合員に直接かかわる問題であるとして、団交拒否は不当労働行為にあたると判定した。

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 根岸病院事件(東京高裁判平成19.7.31)

「労働組合法7条2号の趣旨(使用者に交渉を義務づけることで、労働条件等に関する問題について労働者の団結力を背景とした交渉力を強化し、労使対等の立場で行う自主的交渉による解決を促進し、もって労働者の団体交渉権を実質的に保障すること)から、義務的団交事項については、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件等と解するのが相当であって、非組合員である労働者の労働条件に関する事項については、当然には義務的団交事項にあたらないが、それが将来にわたり組合員の労働条件、権利等に影響を及ぼす可能性が大きく、組合員の労働条件と関わりの強い事項については、義務的団交事項にあたると判示した。」

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