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労災保険の概要
●労災保険とは
正しくは「労働者災害補償保険法」といい、法律で定められた保険制度です。この保険制度は公的医療保険とは異なり、使用者が労働者への災害補償を行うための保険制度です。
まず前提として、労働基準法に次の規定があります。 「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。 2.前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。」(労働基準法第75条)
使用者には労働者の災害補償義務がありますが、労災保険から給付を受けられる場合は使用者はその補償の責を免れるとされています。
労災保険から給付を受けられない場合は使用者はその補償の責を免れることができません。
労災保険から給付を受けられる場合とは?
「労働者災害補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかつた労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」(労働者災害補償保険法第1条)
この保険制度の管理・運営(管掌)は、政府(厚生労働省)が行うこととされ、基本的には、労働基準法が適用される事業が対象となります。
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●業務上の疾病及び療養の範囲
ではどんな場合に災害補償が行われるのでしょうか。
労働者災害補償保険法施行規則第35条別表第1の2に次の規定があります。
「1.業務上の負傷による疾病
2.物理的因子による疾病(紫外線にさらされる業務による皮膚疾患、電離放射線にさらされる業務による急性放射線症等)
3.身体に過度の負担のかかる作業態様による疾病(白ろう秒、筋肉・骨の疾患)
4.科学物質等による疾病(すず・うるし等にさらされる業務による皮膚疾患等) 5.粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症等の疾病
6.細菌、ウイルス等の病原体による疾病 7.がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による疾病
8.その他中央労働基準監督審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病
9.その他業務に起因する疾病」
これを整理すると次のようになります。
1.業務災害(仕事が原因となって生じた負傷、病気、障害又は死亡) 2.通勤災害(通勤が原因となって生じた負傷、病気、障害又は死亡)
●業務災害
労働災害とは、業務上の事由又は通勤途上で、負傷、疾病、障害、死亡する災害をいいます。
労働災害をカバーする労働者災害補償保険は、労働者の資格如何に関わらず、アルバイト、パートを含む全ての労働者に適用されます。
ただし、例外として公務員、船員には適用されません。
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業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
・業務起因性
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。
・業務遂行性
また、業務災害に対する保険給付は労災保険が適用される事業に労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。
原則、国の直営事業、非現業の官公署、船員法の適用を受ける船員を除いて、1人でも労働者を使用している事業が適用事業となります。
労働者は、常用、臨時雇、日雇、アルバイト、パ−トタイマ−などの種類を問わず、賃金が支払われる者をいいます。
●業務上の負傷
▼業務遂行性;
・事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
たとえば、担当業務、事業主からの特命業務や突発事故に対する緊急業務に従事している場合、担当業務を行ううえで必要な行為、作業中の用便、飲水等の生理的行為や作業中の反射的行為その他労働関係の本旨に照らし合理的と認められる行為を行っている場合などです。
・事業主の支配・管理下にあるが、業務に従事していない場合
たとえば、休憩時間に事業場構内で休んでいる場合、事業附属寄宿舎を利用している場合や事業主が通勤専用に提供した交通機関を利用した場合などです。
休日に構内で遊んでいるよう場合は、事業主の支配・管理下にあると言えません。
・事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
たとえば、出張や社用での外出、運送、配達、営業などのため事業場の外で仕事をする場合、事業場外の就業場所への往復、食事、用便など事業場外での業務に付随する行為を行う場合などです。
出張の場合は、私用で寄り道したような場合を除き、用務先へ向かって住居又は事業場を出たときから帰り着くまでの全行程にわたって業務遂行性が認められます。
▼業務起因性;
・事業主の支配・管理下にあって業務に従事している場合
この場合、災害は被災労働者の業務としての行為や事業場の施設・設備の管理状況などが原因となって発生するものと考えられますので、他に業務上と認め難い事情がない限り、業務上と認められます。
業務上と認め難い特別な事情には、被災労働者が就業中に私用(私的行為)又はいたずら(恣意的行為)をしていてその行為が原因となって災害が発生した場合、労働者が故意に災害を発生させた場合、労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合などがあります。
・事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
出社して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の施設管理下にあると認められますが、休憩時間や就業前後は実際に仕事をしているわけではないので行為そのものは私的行為です。
この場合、私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められません。
たとえば、休憩時間に同僚と相撲をとっていて腰を痛めた場合やキャッチボ−ルの球を受け損なって負傷した場合などです。
一方、事業場の施設・設備や管理状況などがもとで発生した災害は業務災害となります。
たとえば、寄宿舎が雪崩で倒壊して被災した場合や休憩時間に構内で休憩中トラックと接触して被災した場合などです。
・事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
出張などの事業場施設外で業務に従事している場合は事業主の管理下を離れていますが、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているわけですから、途中で積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的に業務遂行性が認められます。
さらに業務起因性についても特にこれを否定すべき事情がない限り、業務災害と認められます。
●業務上の疾病
労働者に生じる疾病については、一般に多数の原因又は条件が競合していて、広義の条件の一つとして労働あるいは業務が関与することを完全に否定し得るものは極めて稀です。
しかし、単にこのような条件関係があることをもって直ちに業務と疾病との間に因果関係を認めるのではなく、業務と疾病との間にいわゆる相当因果関係があると認められる場合にはじめて業務上疾病として取り扱われることになります。
労災保険法による業務災害に関する保険給付は、労働基準法の規定に定める災害補償事由が生じた場合に行うものとされています。
労働基準法における災害補償責任は事業主の過失の有無を問うことなく、事業主に課せられるものとされていること(無過失賠償責任)、また、罰則をもってその履行が担保されていること(労基法第119条第1号)、労災保険法における保険給付の原資は事業主の負担する保険料とされていること等から、労働者が罹患した疾病の業務起因性は、明確で、かつ、妥当なものでなければならないことになります。
また、業務により有害因子の曝露を受けることによって生体に何らかの反応が生じたとしても、これが直ちに労災保険給付の対象となるものではなく、医学上療養を要することが認められる疾病が生じた場合にはじめて労災保険給付の対象となります。
▼業務遂行性
業務上疾病も業務上の負傷の場合と同様に業務起因性を要件としており、その前提条件として業務遂行性が認められる必要があります。
労働者が労働契約に基づいて事業主の支配管理下にある状態と定義され、業務上疾病は労働者が労働の場において業務に内在する種々の有害因子に遭遇して引き起こされるものですから、これら有害因子を受ける危険にさらされている状態を業務遂行性ということになります。
ただし、この業務遂行性は、労働者が事業主の支配管理下にある状態において疾病が発生することを意味しているのではなく、事業主の支配管理下にある状態において有害因子を受けることを意味しています。
▼業務起因性
業務上疾病の発症の形態は、業務に内在する危険としての有害因子が労働者に接触し、又は侵入することによって疾病発生の原因が形成され、発症はその危険が具現化されたものとなります。
したがって、業務起因性とは、業務と発症原因との間及び発症原因と疾病との間に二重に有する因果関係を意味します。
そして、それぞれの因果関係は単なる条件関係ないしは関与ではなく、業務が発症原因の形成に、また、発症原因が疾病形成にそれぞれ有力な役割を果たしたと医学的に認められることが必要となります。
一般的には、労働者に発症した疾病について次の3要件が満たされる場合には、原則として業務上疾病と認められます。
・労働の場における有害因子の存在
この場合の有害因子は、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。
ただし、一般的環境の場と労働の場において同一の条件で発症の原因となるもの及び人の健康障害を引き起こすことの知見が得られていないものは、労働関係の場における有害因子とはされません。
・有害因子への曝露条件
健康障害は有害因子へのばく露によって起こりますが、当該健康障害を起こすのに足りるばく露があったかどうかが重要であり、基本的にはばく露の程度とばく露期間によって決まりますが、どのような形態でばく露を受けたかによっても左右されるので、これを含めたばく露条件の把握が必要となります。
・発症の経過及び病態
業務上疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触し又はこれが侵入することによって起こるものですから、少なくともその有害因子へのばく露開始後に発症したものでなければなりませんが、業務上疾病の中にはばく露した有害因子の性質、ばく露条件等によって有害因子へのばく露後短日時のうちに発症するものもあれば、相当長期間の潜伏期間を経て発症するものもあります。
したがって、発症の時期は、有害因子へのばく露中又はその前後のみに限定されるものではないが、有害因子の性質、ばく露条件等からみて医学的に妥当なものでなければなりません。
また、業務上疾病の症状・障害は、一般的に有害因子の性質、ばく露条件等に対応する特徴を有するので、臨床医学、病理学、免疫学等の分野における医学的研究によって確立された知見に基づいて業務起因性の判断がなされることになります。
●通勤災害
労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。
▼通勤とは
労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいいます。
業務の性質を有するものを除きます。
通勤災害とされるためには、その前提として、労働者の住居と就業の場所との間の往復行為が通勤の要件を満たしている必要があります。
労働者が、往復の経路を逸脱し、または往復を中断した場合には、逸脱または中断の間およびその後の往復は通勤とされません。
ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き通勤となります。
なお、平成18年4月1日以降、一の勤務場所から他の勤務場所への移動中及び単身赴任者が赴任先の住居と自宅との間の移動中に起きた災害についても、通勤災害の対象となりました。
▼労災における通勤の要件
・就業に関し
労働者の住居と就業の場所との往復行為が業務と密接な関連をもって行われることを要します。
労働者が被災当日業務に従事することになっていたこと、または、現実に従事したことが必要です。
往復行為が業務に関連しているかどうかは、例えば、出勤の場合、遅刻やラッシュを避けるため早出等就業開始時刻に間に合うよう住居を出て就業の場所へ向かうように、直接就業との関連性が認められれば、時刻的に若干の前後があっても就業との関連性は失いません。
・住居
労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業の拠点となる場所です。
就業の必要性から労働者が家族のいる住居とは別にアパ−トを借りている場合や、天災や交通ストライキ等の事情のためやむをえず一時的に通常の住居以外の場所に宿泊する場合は、就業の拠点としての性格を有する限り住居と認められます。
単身赴任者等が週末等に就業の場所から家族の住む家屋へ帰り、週初め等に当該自宅から就業の場所へ出勤する場合についても、一定の要件に該当する場合は当該自宅が住居と認められます。
・就業の場所
労働者が業務を開始し、また終了する場所です。
一般的には、会社、工場、事務所等本来の業務を遂行する場所のほか、商品を得意先へ届けてその得意先から直接帰宅する場合はその届け先が就業の場所となります。
外勤業務に従事する労働者が、自己の担当する特定区域内にある数カ所の得意先を回って自宅との間を直接往復しているような場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所であり、最後の用務先が業務終了の場所となります。
・合理的な経路および方法
労働者が住居と就業の場所との間を往復する場合に、一般に用いると認められる経路および手段等です。
合理的な経路は、通勤のために通常利用することができる経路であれば、複数あったとしてもいずれも合理的な経路となります。
道路工事等当日の交通事情により迂回してとる経路など通勤のためにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。
しかし、特段の合理的な理由もなく著しく遠回りとなる経路をとる場合などは、合理的な経路とはなりません。
また、合理的な方法については、鉄道、バス等の公共交通機関を利用する場合、自動車、自転車等を本来の用法にしたがって使用する場合、徒歩の場合等通常用いることのできる交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず、一般的な合理的な方法となります。
・業務の性質を有するもの(業務災害になります)
要件を満たす往復行為であっても、当該往復行為中に被った災害が業務災害と解されるものです。
例えば、事業主の提供する専門交通機関を利用してする出退勤、突発的事故等による緊急用務のため休日に呼び出しを受け緊急出勤する場合などです。
・逸脱し、または中断した場合(通勤災害になりません)
逸脱とは、通勤の途中で就業または通勤と関係のない目的で合理的な経路からはずれることをいい、中断とは、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行うことをいいます。
具体的には、通勤の途中で映画館に入る場合、バ−で飲酒する場合などがこれに該当します。
しかし、労働者が通勤の途中において、経路近くの公衆便所を利用する場合や経路上の店でタバコや新聞、雑誌を購入する場合などのように、労働者の通常の通勤行為に付随するとみられるささいな行為を行う場合には、必ずしも逸脱、中断として取り扱われるとは限りません。
通勤の途中で逸脱または中断があるとその後たとえ再び経路に復したり、中断となった行為を中止したとしても、原則通勤とは認められません。
例外として、逸脱、中断が日常生活上必要な行為であって労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行うものである場合には、逸脱、中断の間を除き、合理的な経路および方法に復した後は再び通勤となります。
たとえば、スーパーでの飲食料品を購入する行為、書籍や文具を購入する行為、クリーニング店に立ち寄る行為、病院において診療を受ける行為、理髪店や美容院に行く行為などです。
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●労災保険に加入する事業所
「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。」(労働者災害補償保険法第3条)
つまり、すべての事業所です。
但し、同居の親族のみを使用する事業や家事使用人などは対象となりません。
労災保険は強制適用で、一般的な保険のように加入手続きして保険関係が成立するのとは異なり、適用要件が生ずれば保険関係が成立したことになります。
事業が保険関係成立の届けをしていなくとも労災保険の適用を受けることになります。
例外;労災保険法に代わる法律が定められているものです。
国の直営事業
官公署の事業(労働基準法(昭和22年法律第49号)別表第1に掲げる事業を除く。)
使用労働者数5人未満の農林水産事業の一部(任意適用事業)
船員保険法(昭和14年法律第73号)第17条の規定による船員保険の被保険者(船員保険法 第17条)
労災保険に代わる制度が定められている適用除外事業及び任意適用事業を除いては、労働者を使用する事業は全て労災保険の適用を受けます。
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●適用を受ける労働者
「職業の種類を問わず、前条の事業又は事務所(適用事業)に使用される者で賃金を支払われる者をいう。」(労働基準法第9条)
つまり、会社に労務を提供してその対価として賃金が支払われていれば労働者ということになります。
たとえ労働基準法の適用を逃れるために委託契約書などを作成してあっても、実態として勤務時間を拘束したり具合的な指揮命令などをしていれば労働者と認められます。
労働者の判断基準;次の規準で判断されます。
1.労働提供の形態が指揮監督下の労働であること a.仕事の以来、業務従事の指示等に対し諾否の自由があるかどうか b.業務遂行上の指揮監督の有無
2.報酬が労務の対価として支払われていること a.報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労働を提供していることの対価と判断されるかどうか
3.判断を補強する材料 a.事業者性の有無 b.専属性の程度
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●労災保険給付の概要
1.療養のため休業する場合
休業(補償)給付
傷病(補償)給付
2.障害が残った場合その程度に応じ
障害(補償)給付
障害(補償)一時金
3.被災労働者が死亡した場合
遺族(補償)年金
遺族(補償)一時金
葬祭料(葬祭給付)
4.常時または随時介護を要する場合
介護(補償)給付
5.脳・心臓疾患に関連する異常所見
二次健康診断等給付
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●不服申立(審査請求、行政訴訟)
被災労働者又は遺族が、労働基準監督署長が行った保険給付に関する決定(支給・不支給)に対して不服がある場合には、都道府県労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官に不服申立て(審査請求)をすることができます。
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●労働福祉事業の概要
社会復帰促進事業 (義肢等の支給、労災病院の設置・運営等)
被災労働者等援護事業 (特別支給金、労災就学等援護費の支給等)
安全衛生確保事業 (労働災害防止対策の実施、産業医学の振興等)
労働条件確保事業 (未払賃金の立替払事業等)
●労災保険と健康保険
病気やケガをしたときに、医療費の負担や長期療養のための補償などがあるのが健康保険や労災保険です。
この2つの保険の内容は異なります。
会社員の場合どちらの保険にも加入していますが、どちらの保険の給付を受けるのかはケースによります。
・保険料
健康保険の保険料は、本人と事業主が折半で負担しますが、労災保険の保険料は全額、事業主負担で、労働者本人に保険料の負担はありません。
・扶養家族
健康保険では一定の扶養家族は被扶養者として、保険給付の対象になりますが、労災保険は働いていたために起こつた事故を対象にしていますので、本人のみが補償を受けられます。
ただし、遺族給付という制度はあります。
・休業保障
健康保険では、1年6か月間にかぎって傷病手当金がもらえます。
傷病手当金は、被保険者が業務外の傷病のため仕事につけず、その間、給与の支払いがない場合に、安心して療養ができるように生活を保障する目的でつくられた制度です。
労災保険では、療養のために休んでいる期間中、休業補償給付がもらえます。
これは業務上による事故が原因で休んでいますので、健康保険と違って受給期間に制限はありません。
給付金額は、健康保険は給与の日額(標準報酬日額)の3分の2相当額、労災保険は特別支給金もあわせて日額(給付基礎日額)の8割です。
・障害保障
健康保険には、障害が残った場合の保障はありません。
しかし、健康保険に加入している人は原則として厚生年金保険にも加入していますので、障害に関しては厚生年金保険によって保障されています。
労災保険では、障害の程度によって年金か一時金のかたちで補償され、前払いの制度もあります。
生活費に囲った場合などには給付を受けられます。
なお、厚生年金保険の障害厚生年金と、労災保険の年金給付が重複するときには、障害厚生年金が全額支給され、労災保険の年金額が調整されます。
・遺族保障
健康保険は短期給付ですので遺族に対する保障はなく、埋葬料として一律5万円がもらえるだけです。
しかし、健康保険に加入している人は原則として厚生年金保険にも加入していますので、厚生年金保険からは遺族厚生年金が支給されます。
遺族厚生年金の額は、故人がもらうはずであった老齢厚生年金の4分の3相当額です。
国民年金からは、子どもがいれば遺族基礎年金がもらえます。
労災保険の遺族給付は年金と一時金の2種類があり、どのような遺族が遺されたかによって決まります。
また、支給額も遺族の人数によって決まります。
さらに、前払いの制度もあります。
そして、労災保険にも葬祭料があり、28万円に死亡した労働者の給付基礎日額の30日分を加えた額が支給されます。
●特別加入制度
労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、障害または死亡に対して保険給付を行う制度です。
労働者が業務上・通勤途上で被災した場合、その治療費、休業損害、後遺症障害、死亡の場合の遺族補償等を補填しています。
そして、使用者に対する補償は法の趣旨からして行われていません。
しかし、労働者以外の人のうち、その業務の実状、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の人に対して特別に任意加入を認めています。
労働者を使用しないで事業を行うことを常態とする一人親方その他の自営業者及びその事業に従事する方のうち、次の種類の事業を行う人が特別加入できます。
・自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)
・建設の事業(大工、左官、とびの方など)
・漁船による水産動植物の採捕の事業(漁船に乗り組んでその事業を行う方に限ります) 林業の事業
・医薬品の配置販売(薬事法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業をいいます)の事業
・再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業
一人親方等としての加入要件を満たす人が特別加入する場合、一人親方等の団体を単位として特別加入することとなります。
一人親方等の団体は、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に対して特別加入申請書を提出し、承認を受ける必要があります。
一人親方等の特別加入については、一人親方等の団体を事業主、一人親方等を労働者とみなして労災保険の適用を行うこととなりますが、この一人親方等の団体として認められるためには、一定の要件を満たすことが必要です。
既に特別加入を承認されている人で、氏名や作業内容等に変更があった場合、一人親方等の団体は、特別加入に関する変更届を署長を経由して局長に対して提出することが必要です。
特別加入者の種別は、中小事業主等、一人親方等、海外派遣者(労働者〉 の3つに区分されています。
・中小事業主等
一定規模以下の事業の事業主が、労働保険の事務を労働保険事務組合に委託していること、業務に従事している事業主の家族役員がすべて加入の申請をすること、定められた規模以下の労働者を使用する中小事業主であること、労災保険が成立していることの条件をすべて満たす場合、希望すれば加入の申請が可能です。
特別加入の場合は所轄労働基準監督署長から承認されて初めて効力を生じます。
したがって、承認日以前の災害については補償されません。
役員、事業主ですから、通常賃金を基に算出する平均賃金を算定することができません。
そこで、申請時に希望する給付基礎日額を、所定範囲の額から選択して申請します。
・一人親方等
建築関連に従事する者、個人タクシー事業者、バイク便従事者等で労働者がおらず自ら業務に従事する者の場合、任意の一人親方組合を通じて特別加入することができます。
一人親方組合を擬制の事業主として、その構成員である一人親方を労働者とみなすので、当然組合員であることが条件です。
申請時に希望する給付基礎日額を所定範囲の額から選択して申請します。
・海外派遣者
この特別加入は、事業主を対象とはしておらず、海外に派遣している労働者が対象の災害補償です。
海外派遣者の一部(事業主が希望)だけの申請でも可能です。
申請時に希望する給付基礎日額を所定範囲の額から選択して申請します。
国内における労災保険とは別個に労災保険を成立させますが、労働保険事務組合に委託していることが条件とはなっていません。
労災保険の番号が国内のものとは別に付与されます。
・その他
特別加入の制度はあくまでも労災保険の例外的な制度ですので、すべて加入の申請を行って監督署長の承認を受けるという手順を踏まなければなりません。
年度途中の加入、脱退はできますが、中小事業主等の特別加入の場合は、脱退のときも一括して、従事している者全員について脱退の申請を行わなければなりません。
労働保険事務組合は、商工会議所、商工会、同業者組合、社会保険事務所等に併設されており、監督署に管内の事務組合の名簿が備えられています。
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